■ 山岳会が高齢化することで生じる課題は、
組織の不活性化・世代交代の停滞・価値観の固定化
に関連するものが多いです。心理的な要因も絡んでくるので、具体的に整理してみます。
1. 「指導者が育たない」問題(知識の停滞・権威の固定化)
🔹現象:
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長年活動してきたベテランが「指導者」ポジションに固定され、新人が自発的に育ちにくい。
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伝統的な「師弟関係」が強すぎると、新人が「指導される側」にとどまり続け、自主性を持てなくなる。
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一方、ベテランの指導法が時代遅れになっても、「自分が正しい」という思い込みで更新されない。
🔸心理的要因:
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ベテラン側: 「自分よりできる新人が出てくると、居場所がなくなる」という不安。
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新人側: 「この人たちのやり方に合わせなければならない」と感じ、萎縮する。
🔹解決策:
✅ 指導者層のローテーションを意図的に行う(年功序列ではなく「更新制のリーダー制度」)
✅ 新人が指導する側になる機会をつくる(例:「逆メンタリング」=若手がベテランに新しい技術を教える機会を設ける)
✅ 外部からの技術講習を定期的に受け、アップデートを怠らない
2. 「世代交代が進まない」問題(新人が定着しない)
🔹現象:
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新人が入っても、なじみにくい雰囲気があり、すぐに辞めてしまう。
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「昔ながらのやり方」にこだわるベテランと、「新しい方法を試したい」若手の間で摩擦が起こる。
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**「俺たちが苦労して覚えたんだから、お前も苦労しろ」**的な価値観が残る。
🔸心理的要因:
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ベテラン側: 「今までのやり方が正しい」と思いたい(=自己のアイデンティティがそこにある)。
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新人側: 「自由にやれないなら、他のグループに行くほうがいい」と感じる。
🔹解決策:
✅ 若手主体のプロジェクトをつくる(新しいルート開拓・山行計画などを若手が主導する)
✅ ベテランと新人の交流の場を増やす(懇親会やオフ山行を通じてフラットな関係をつくる)
✅ 「今の時代に合った登山スタイル」を受け入れる文化を作る(GPSやSNSの活用など)
3. 「新しい価値観を受け入れにくい」問題(閉鎖的な文化)
🔹現象:
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「俺たちの時代はこうだった」と昔の価値観が押し付けられる。
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女性や海外のクライミングスタイル、スポーツクライミング文化などを受け入れにくい体質。
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「山岳会の伝統」ばかりが重視され、「今後どうしたいか」というビジョンがない。
🔸心理的要因:
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ベテラン側: 「新しい価値観を受け入れると、今までの自分を否定されるように感じる」。
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新人側: 「古臭い価値観に縛られるなら、個人でやるほうが楽」。
🔹解決策:
✅ 「これからの山岳会のあり方」について定期的に話し合う場を設ける
✅ 外部の講師や異なる文化のクライマーとの交流を積極的に持つ
✅ 伝統と革新をバランスよく取り入れる(例:伝統的な登攀技術+最新の安全技術の融合)
4. 「承認欲求のこじれ」問題(心理的投影のトラブル)
🔹現象:
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ベテランが「新人が自分を立てない」と感じて機嫌を悪くする。
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「このルートは俺が開拓したんだ」と、自分の過去の栄光にしがみつく。
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逆に、成長した若手を「調子に乗るな」と叩くことで、自分の優位性を保とうとする。
🔸心理的要因:
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ベテラン側: 「昔の自分が誇りだったから、それが通用しなくなるのが怖い」。
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新人側: 「素直にすごいと思えない相手に対して、敬意を持ちにくい」。
🔹解決策:
✅ 「リスペクトのあり方」を明確にする(年齢ではなく「行動」に敬意を払う文化を作る)
✅ 承認欲求を満たす場を分ける(技術以外の貢献にも評価を与える)
✅ ベテラン同士が「今後の自分の役割」を話し合う場を設ける
5. 「山岳会自体の存続が危うい」問題(社会の変化に適応できない)
🔹現象:
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若手の入会が少なく、会員数が減少する。
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山岳会に入らなくても、ネットで情報収集・SNSで仲間探しができるので、会に属するメリットが減る。
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会費を払う意義が薄れ、組織の運営が厳しくなる。
🔸心理的要因:
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伝統主義: 「昔はみんな入っていた。だから今も入るべきだ」。
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新しい時代への適応不足: 「オンラインの活用」「新しい山行スタイル」への理解が乏しい。
🔹解決策:
✅ オンラインの活用を進める(SNSや動画配信などで情報を発信)
✅ 「山岳会に入るメリット」を明確化する(例:特別な講習、ルート開拓の支援など)
✅ 柔軟な参加スタイルを導入する(月会費制ではなく、スポット参加型の仕組み)
💡まとめ
**山岳会が抱える問題の本質は、「過去の成功体験を手放せないこと」**にある。
✅ 指導の形をアップデートしないと、新人は育たない。
✅ 世代交代が進まないと、組織が硬直化する。
✅ 新しい価値観を受け入れないと、外部から人が来なくなる。
✅ 承認欲求のこじれを放置すると、人間関係が悪化する。
✅ 時代に適応しないと、組織そのものが存続できなくなる。
最終的には、「山岳会の価値は何か?」を見直し、**「継続的に進化できる組織」**にしていくことが必要ですね。