2017/06/02

商業主義がいかに本質を塗り替えるか

■ 興味深いやりとり

今日はFBで、面白いやりとりを見かけた。

大きな示唆が含まれる内容だったので、記録に残すことにする。

■ こちらのチョークの広告のうたい文句に問題がある

高いフリクションと持続性。ジム、外岩、コンペと欠かせないチョーク「PD9」

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≪ツッコミ≫
最近のフリークライミングは、登るために薬品の力を積極的に利用することが「欠かせない」のですね。これから、より高度な薬品を利用することで、より高難度の課題が登れるようになっていくのが楽しみですね。

ところで、これは広告ではないようですから、PD9が、「ジム、外岩、コンペと欠かせない」というのが、〇〇社の公式見解という理解でよいですよね?

≪広告主≫
こちらの記事はタイアップ広告となっております。
タイアップ広告につきましては、広告であることを示すため記事内にimpressionと表記しておりました。
不十分な表記で誤解を与えてしまったことをお詫び申し上げます。
今後タイアップ広告に関しては、より明確にするためsupported byという表記を追加致します。
何卒よろしくお願い申し上げます。

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■ マーケティングってね

私は、社会人大学院でマーケティングを受講し、評点Aを取っています。そのクラスでは、という限定つきですが、まぁ良く理解した、という意味です。

で、私がマーケティングを勉強して、本当によかったなーと思ったのは、

 いかにして世界が思ったのとは違う方向に来ちゃったのか、理解した

ということです…。

例えば、現実の世界では、洗浄力が強い洗剤は手荒れが起きるのが当然です。手の油脂をとってしまうから。二律背反です。

しかし、マーケターの使命は、手荒れのことには触れず、洗浄力だけを強調することです。

そうすると、その洗剤は売れるのですが、結果としては、手荒れの人を世の中に増やすことになります。

こうして、世の中には二つの世界が出現します。

 お皿がきれいな社会     =善
 手荒れの人がいっぱいの社会 =悪

誰だって良い世の中にしたい!と思っているのです。マーケターもです。

お皿洗いで、簡単に汚れが落ち、キレイなお皿が世の中に増えるのは、善、でしょう。でも、その反面、陰陽でいえば、陰のほうは、マーケティングの掟では、宣伝してはならないのです。そんなこと言ったら、買いますか?買わないでしょう?

だから、善を強調しているだけで、その裏側の悪も、同様にはびこるというわけです。つまり、この例では、手荒れがはびこるということです。

これは、行き過ぎたポジティブ思考と同じ原理です。

■ 実社会に落とし込むと…

それを実社会に実例として示しているのが、上記のやりとりです。

フリークライミングの”フリー”は、自分の肉体しか使わないと言う意味です。具体的にはロープを前進する手段としては使わない。反対語はエイドです。

今では、チョークとクライミングシューズは、エイドには含まれず、良いということになっているし、広義のエイドということならば、クラックでジャミングするときのテーピングなども、エイドじゃんか~と言われたら、言い返せないかもしれないです。

が、ジャミンググローブでも、なんでも、エイドなしで登るのが本来の姿だ…という認識、どこか後ろめたいような気持ちがあります。

この広告には、一切ありませんね(笑)

なので、そこが問題なのです。

チョークをみんなが使うというのは、その通りではありますが、何か自分以外の力を積極的に利用すること、というのは、本来のフリークライミングの精神に反します。

でも、広告は、無邪気で、まったく悪気がないので、するどい人でないとスルーしてしまいます。10人いたら、9人はスルーしてしまうでしょう…

■ impression, supported byで、読者が理解できるか?

理解できませんね(笑)?

ちゃんとしたフリークライミングの原則や理念を、ちゃんとしたクライマーから教わっていない人には、impression, supported byという英語の、しかも意味不明の但し書きがついて、理念と離れたことをしている、という意識が生まれるでしょうか?

無理ですね・・・

ということで、こういう事情で、理想や理念、そもそもの本質と言ったものは失われていくのです。

それが山でも、クライミングでも、ヨガでも起こっていることです。