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2023/11/18

【読了】100%クライミング人生

 大開拓王の東さんの最新書籍。(というか、クライミングの本は、大体ロクスノ連載をまとめただけのもの…)

https://amzn.to/47yw6cZ

面白かった☆

冒頭に、東さんは開拓者ではなく、セッターなんだという記述があり、開拓者のあるべき姿が北山さんにより語られているが…開拓者=ビンボー臭い、泥まみれである、というのが要旨なようで…それだから、あんまり開拓志望の男性クライマーが出てこないのかもしれない。

昨今の男子は、韓国アイドル的で、日焼けダメでーす、メンズエステ行ってまーす、みたいな人も多いからだ。

さて、東さんのセッター稼業と開拓ライフが、大変華やかに描かれており出てくるメンバーは、世界を股に掛けるコンペクライマーだらけであるが…

岩場でグレーディングするときの、大事な要素が書いてあった。

  そのグレードを限界とする人にとっての核心をランナウトしない

である。 

例えば、5.10bの課題を作った場合、作った本人は大抵の場合、もっと登れる人で、5.13クライマーレベルであろう… しかし、5.10bというのは、私のような一般クライマーでも登る。

その想定されるクライマーがレットポイントするのがやっとと言う場合、ランナウトすれば危険にさらすことになる。

ーーーーーーーーーーー 引用

開拓のモラル

ルート開拓は無償の行為であるし、そのルートを再登するクライマーに対して、どの程度まで責任を負わなければならないかは定かではない。ただし、開拓したルートを公表したり、雑誌に発表したりするという行為は、他人を迎え入れることを前提としている。再登者のことを考えず、ただ自分がその岩を登りたいのであれば、自分が登った後にボルトを撤去したほうがましだ。

このエリアで良くないと感じたことをまとめると

 ①ルート間隔が近い

 ②ボルト間隔が遠い

 ③岩の脆い部分にルートがある

 ④終了点がお粗末

である。

日向神は、二つも当てはまっている。

ボルト間隔が近いのがいいというわけではない。12Bのルートにある10B程度の部分なら、5mくらいランナウトしても仕方ないときがあるだろう。

当然そのルートを挑戦するクライマーなら落ちない部分であるから。

しかし、10bのルートで10Bに近いムーブが出てくる部分をランナウトさせてはいけない。

開拓者は問題ない力量でも、そのルートをレッドポイントするのがやっとというクライマーを危険にさらすことになるからだ。

ボルト位置はラインの案内に役立ち、クリップのしやすさを考え、岩の強度のある部分にうつと言うセオリーがあるが、グレードに対応した間隔も必要である。

P63

‐‐‐‐‐‐‐‐‐引用終わりーーーーーーーー 太字、赤字当方

我が意を得たり、な記述であったのだが…

付け加えることがある。

昨今の5.12クライマーと言うのは、昔のように

 well rounded (よく練られた、包括的な)

な成長をしてきた5.12クライマーじゃないってことだ。

今の一般クライマー、特に、講習会などにも参加せず、放置プレイの山岳会に籍だけおいて、実質は、友達をまねしてクライミングしており、正規の教育の一縷を得ていない人は、

 お買い得品数珠繋ぎ、一発芸5.12クライマー

であることが多い。

一般クライマーの旅は、お買い得品の5.9から始まる…お買い得品5.9が登れたら、お買い得品5.10を登り、お買い得品5.11を登り、お買い得品5.12で上がるのである。

そうすると、5.13が登れても、ヨセミテで、スラブの5.8で落ちてアメリカアルパイン協会の事故報告書に載ることになったり、インスボンでは、5.13クライマーでも、5.8のワイドクラックに登れなかったそうである。

お買い得品を探す、と言う行為は、とても普及している。お買い得だけの一発芸で、レッドポイントで5.12が登れた人でも、「私は5.12クライマーです」と述べるし、私のように「ゆっくり5.10Aをオンサイトで登っていきたい」という人がいても、「4本5.10Aを登ったら、5.10bに行ってください」と無理やりしたくもない、グレードアップを求められる。

つまり指導者側も、Well Roundedなグレード、クライミング能力を身に着けさせようというよりも、とにかく、グレードを稼がせたい、という気持ちが強いのが、昨今のクライミング事情だ。

これは、自信をつけさせたいという親心もあるだろうが、ほとんど、”私がこのクライマーを育てました!”と言いたいというエゴの声のほうが強いのではないだろうか?

クライマーの主体的な学びや主体的な成長よりも、境界線侵害と言えるようなスタイルでの、クライミング教育がまだ世間を跋扈しているのである。

理由はどうであれ、昨今の男性クライマーが自己申告してくる

 5.12登れます

は安易に信用してはいけない。期待する技術的バックグランドはほとんど伴わないことが多いし、5.12登れると言っている男子が、5.9で”跳ね返される”(そうです)。つまるところ、あまり実力の厚みはない。

エイハブ船長1級は、5.9がリードできない男子でも、一瞬芸で登れました!と申告してくる。リードも同じようなのに陥っていると思われ、昔は、グランドアップで実力をあげて行っていたので、意味があった5.12も、今では、ボルトとロープに守られ、ハングドッグでうんうん唸ってやっとこさ登っても、5.12なのである。

私なんかは、5.12がオンサイト出来るまでは、ハングドッグ禁止にしたらいいんじゃないかとすら思うほどだ。安易にロープにぶら下がることが、さも、

 執着心があって素晴らしい

みたいな評価になってしまっている。それは、40年前ですら、5.13とか、5.14の世界最難の方々の話である。みなさん、誤解なきよう。