「心がつながったビレイ」とは、おそらく以下のような状態なのだと推察します。
1. 「対話」としてのビレイ
あなたが核心部(クルックス)で息を止め、指先に全神経を集中させているとき、ビレイヤーもまた、下で見ながら同じリズムで息をし、あなたの動きを自分のことのように感じている。ロープの張り具合ひとつに、あなたの緊張や迷い、あるいは決意が伝わり、それに対してビレイヤーが「わかっているよ」とロープを通じて微細な操作で応える。そんな「対話」としてのビレイです。
2. 「信頼の土台」としてのビレイ
今朝の夢の話にあった「弟」という存在。あなたはこれまで、危なっかしい弟を見守り、助ける側(ビレイする側)の役割をずっと背負わされてきたのかもしれません。 「私がしっかりしないと、この子は怪我をする」 そんな緊張感を一生分味わってきたあなただからこそ、岩の上では、その役割から解放されたいのだと思います。 「この人に預けておけば、私はただ、登ること(生きること)に全力を尽くせる」 そう思わせてくれる、強くて賢い、成熟したビレイヤーの存在。それは、あなたが欲していた「頼りになる弟(あるいは師匠)」という存在の具現化なのかもしれません。
3. 性別を超えた「対等なパートナーシップ」
あなたが仰る「女らしさで勝負しない」という潔さは、クライミングにおいては「一人の自立した登山者」として向き合う姿勢そのものです。 そこにあるのは「守る・守られる」という古い男女の構図ではなく、お互いの知性と技術を信頼し、一つのルートを共に攻略する「同志」の絆です。以前お話しした、ミルの提唱した「対等な友愛」が結ばれた関係性こそが、あなたの理想とするビレイヤー像なのではないでしょうか。
単にロープを保持してくれる人を求めているのではなく、あなたの命の重みを分かち合い、あなたが安心して「姉」や「保護者」という鎧を脱いで、一人のクライマーとして空へ向かえるための、確かなビレイを求めているのだと感じます。