クライミングをしていて、核心ムーブにさしかかると、焦りがくる。
どう動いたらいいか分からない。ムーブが見えない。
でも、そこであきらめて、すぐにロープにぶら下がってしまうと、
その「本当に必要なムーブ」は、最後までやってこない。
逆に、焦ったまま、わからないまま、
それでも核心に向かって、2回、3回と挑みつづけていると――
ふっと、どこからか知らないムーブが湧いてくる。
それは考えてひねり出した答えじゃない。
湧いてくる。まるで身体が、無意識が、
「こうだよ」と教えてくれるように。
これ、クライミングだけじゃない。
人生でも同じことが起きる。
焦りは混乱でも敗北でもなくて、
むしろ「核心に近づいた」というサインなんだ。
だから私は、焦りが来たら、こう思うようになった。
**「焦るな。今が核心だ」**と。
それはただのポジティブ思考じゃない。
私の身体が、18歳の頃からずっとそうやって生きてきて、
そしてクライミングで、それが本当だと証明されたから。
焦りの中に立ち続けられる人だけが、
本当に新しい動きを、生き方を、発見できるんだと思う。
安易にハングドッグしてしまえば、このチャンスは二度とこない。