2021/09/03

ベアフットクライミング

 日本では、あまり人気がないベアフットクライミング…私は海外のクライミング雑誌を購読しているが、ベアフット専門でやって、V17を登ってしまうクライマーもいるくらいだから、”あ、無理”と即座に切り捨ててしまうようなものでもないだろう…と思う。

なんで日本でベアフットクライミングが普及しないのか?

と思うと、日本では、アルパインクライミングの価値観で成立しているフリーの岩場(つまりランナウトが核心という意味)が、ほとんどなので、フリークライミングの標榜する、”どこで落ちても大丈夫”、が形骸化している、ということがある。

ベアフットでさらに落ちやすくするとなると、ランナウトが当然の日本の岩場ではクライミングシューズを履いていたとしても、落ちることなど許されない。さらに落ちやすいなど、とんでもない、ということになる。

というので、ベアフット
クライミングが普及しない理由を挙げたが、逆に言えば、ベアフットクライミングが普及することは、日本のクライミングの弱点を乗り越えることと繋がるわけなのである。というので、ベアフットクライミングに必要な岩場の要件をまとめる。


1)歩いてトップロープ支点に到着できる岩場であること

ベアフットは落ちやすいわけなので、ランナウトした岩場のリードでしかロープを張れない岩場だとリスクが高すぎる

2)そこそこ段差が楽しめる 

これまで「現代のフリークライミングの水準からは楽しめない」とされていたような岩場は、段差も多く、歩きの延長のクライミングで楽しめる。完全にオーバーハングのボルダーなど、そもそも足の出番が少ないクライミングではない、いままで易しすぎて顧みられなかった岩場などが適切かもしれない。往々にして、アルパインの岩場、と認知されている。例えば山梨であれば、”西湖の岩場”。

3)静かな岩場

人の少ない岩場ということだ。基本的に物珍しいクライミングであるので、奇異の目にさらされるよりは、そうでないほうが集中できるだろう。

同じアルパインの岩場でも、知名の”三つ峠の岩場”より、無名の”西湖の岩場”のほうがベターだという意味だ。

以上の条件を満たすと、とりあえずは、人気の小川山などではなく、忘れさられたような、昔の山岳会の新人が初めての岩登り、などで使ったような、5.9以前、つまり、鎖場の4級みたいな岩場が適しているとなる。関東なら、広沢寺とかそんなところである。

■ そもそもクライミングシューズってエイドなんじゃないの?

現代のグレードの高騰具合はすごいんだが… ボルダラーの男子たちは、チョークさえも、”本気チョーク”などと言って滑りにくい高級品に投資しているようで、そもそも、

フリークライミングの”フリー”って


 道具を使わないって意味


だということが忘れ去られて、たかだかチョークに大枚を差し出すような時世になっている…つまり、本質のところが忘れられ、相変わらず、道具に頼ろうという姿勢が主権を復活してきているということもある。チョークですらそうなのだから、クライミングシューズは、もっとすごいことになっていて足に合うとか、そういう進化ではなく、エッジングしやすいとか、クライマーの能力の不足を補うような方向に進化している。


ま、誰でも分かることだが、”フリー”(道具からフリー)とは真逆の進化方角なんだな。


なので、ベアフットクライミングは、まぁ今のところ、クライミング界ではゲテモノ扱いの類なんだが、よくよく考えれば、


”クライミングシューズというエイド手段からフリーになった、本当にフリーなフリークライミング”


と言えるわけなんであるから、なんで日本で普及しないのか?というと、まぁ、今のクライミングブームが、”ミーハー”の域を出ていないだけの事だろう。

というわけで、ベアフットクライミングは、本来のフリーに立ち返る、という意味では、

がつん!と喝!

みたいな意味合いがあるクライミングである。

みんな、やってみてね!

今まで簡単すぎて利用者が少なかった岩場も利用価値が出てくることだし!