2017/10/20

維持

■ 維持期

クライミングは、低成長期、つまり維持期、にいるわけですが、とりあえず、週1回くらいは、壁に触らないと維持もできない(?)ので、アクシオンへ行ってきました。

一緒に行ってくださった方には、感謝☆

普通のボルダリングだと数時間レベルで登らないと腕がパンプしないのに、スポーツクライミングの壁は、1本で腕、張りますねぇ…。大変(笑)。しかし、今日は5本登って結構満腹です。

■ 振り返る

小瀬の壁でも、5本をノルマにしていましたが…スポーツクライミングと外岩クライミングは全然違う…

前回は、私よりは体格が良く、筋力も当然上のはずの男性と言ったのですが、人工壁は5mくらいでアップアップ、ジムのどっかぶりも、彼は落ちていました。あれ?

垂壁ではリーチがあるので、私ができない課題に届いていましたが… 

クライミングは、個人差がある。得意不得意もあるようです。私は得意不得意で言うと、やっぱり、前傾壁は苦手なようです。

しかし、前傾壁が急速上達したのは、YouTubeでビデオを見てからなんだな(笑)。クライミングムーブと言うのは、下から言われても、もしかして、運動が分かっていない人には分かりづらいのかもしれません。 

前傾壁に関しては、私は体がフレッシュな間、1本目、2本目が一番、調子が良いです。

しかし、このグレードだと、全然、数年間はグレード更新していないハズですが…(笑)、実際は、スラブ、ワイド、クラックと、登れる幅も、グレードも上がっているので、スポーツクライミングの人工壁に関して、グレード更新が滞るのは、別に気にしなくてもいいのかもしれません。

カラダは確実に反応している(=腕太くなりました…^^;)し、海外にクライミングに行くと、成長を感じます。小川山では登れない課題が、まだ登れないですが(笑)。

基本的にリーチなんだろうな、そういう課題は。

私はリーチが短いクライマーなので、その部分の克服がない限り、クライミングそのものが上手になっても、なかなかグレードへの反映は遅いのだと思います。

今日も、登れそうに見えると言われましたが(笑)、体は動くんですけど、短いリーチの分、デッドで取る羽目になって、パワーを使うので、結構、消耗が早いんです。

消耗すると、なかなか大人は回復しない。パワーセーブすることと、デッドは相対する関係にあり、なんだか、克服するには、時間を掛けるしかないみたいです。

どんだけ太い腕になるんだろうな~ (笑)

課題は下半身痩せかなぁ(笑)

2017/10/19

クラックの成長の仕方

■ 今日の発見

スタバで、『岩と雪』を読んでいたのが、前から気になっている記事で戸田直樹さんの記事を読んだ…

インスボンでクラックとスラブを修業してから、ヨセミテに行っている…ヨセミテのあとは、コロラド。

今私はインスボンで修業中なので(笑)、流れが似ている。5.7とか5.8で苦労している姿が描かれていて、親近感が持てる(笑)。というのは、現代のジムクライマーは、5.12をレッドポイントのほうが、長い5.9をずっと登るより楽しいみたいだからだ。

私は、レッドポイントで、高グレードを落とすような登り方は、まだ先かなぁという感じなので…

とりあえず、何をするべきか?という情報収集の一回目。

インスボン → ヨセミテ → コロラド みたいな(笑)?

ラオスは、ホントに快適だったので、毎年行きたい。

2017/10/12

時間さえかければ登れるようになるのかも

■ やってみる前にできないと言わない

私のクライミングは、一体どういうことなのかなぁ…ということを、ここしばらく考えている。

私は、新しい経験に対して、あまり抵抗がない。
初めてのことに、臆するタイプではない。

先日も登攀で行った韓国で、一夜の宿を見つけるのに、現地で飛び入りで見つけた。同行者はびっくりしていた。でも、聞くのはタダ。聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥…。ちょっと違うか(笑)。

そういう面で、あまり私自身は、臆病だったり、人見知りがだったり、ということはないが、それは、後天的に獲得した資質だ。

食わず嫌いをしない、というようなことだ。

やってみる前にできないと言わない!何事も挑戦!という教育を受けた。

なので、私のクライミングは、初めてのこと、自分に適性があるとは、到底、思えないこと、そういうことにも、心を開いて、思い切ってチャレンジしてみた結果、のことだ。

その結果、思いもかけない幸運に恵まれた。海外クライミングにまで行けるようになってしまったのだ。

これは予想以上のことで、本当に運命の不思議としか言いようがなく、とても感謝している。

■ 運動嫌いの人ほど

新しい経験、というのは、誰にとっても、ある意味、自己変革であり、成長しているという、大きな喜びをもたらすのではないだろうか?

ちなみに、クライミングというのは、もともと運動嫌いだった人の方が、なぜか意外に上達することが多い。

実はランもそうなのだそうだ。運動が苦手の人に適しているのだそう。

だから、運動が苦手だった人ほど、クライミングから受ける恩恵…身体的にも、精神的にも…は、大きいのではないか?というのが、私の想像だ。

自分にはできるとは思ってもいなかったようなことが、できるようになる…ということは、世代を問わず大きな自信になるのではないか?と思う。

■ 非日常的な動き

クライミングが、一般的な運動能力とあまり強い相関関係がない、というのは、どういうことだろうか?

たぶん、クライミングに必要な動作が、ほぼまったくと言ってよいほど、日常に含まれていないから、ではないか?と思う。

だいたい、普通の生活で、よじ登ることなんてあります? 子供ならいざ知らず、大人になれば、かぎりなーくアリエナイ、シチュエーションです。

なので、逆に言えば、普段の運動能力のいかんにかかわらず、ほとんどの人のスタートラインが同じだ、ということなのでは?と最近は思うようになりました。

20歳も、40歳も、初めてすぐはたいして変わらない、という現実を目の前にしたからです。

もちろん習得には、若さの有利があるとは思いますが、やったことがない動きをスムーズにできる人は、まぁほとんどいない。

つまりクライミングは、クライミングに接している時間が長ければ長いほど、不慣れではなくなるということなのです。単純に累積時間がモノを言う。

ということは、運動神経が鈍い人にとっては、時間さえかければ良いとも言える面があると思います。

■ 細い尾根

ランの継続は、細い尾根、なのだそうでした。つまり、やりすぎはダメだし、やらなくてもダメ、という…つまり、続けることが大変難しい。 

ある意味、クライミングも、”細い尾根”かもしれません。一気にわー!と、上達する方法はないって意味です。

最近借りてきた、古い岳人(2007年9月号)に菊地敏之さんが寄せた記事で、

「いまどきの、なんともせっかちな人々」

という記事があります。記事の要旨はこうです。

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物事を考えるスパンが短い。あれができたらすぐにこれ、というだけでなく、ある物事にもたった一つの経験ですべて納得し、すぐ次、という発想の人が、あまりにも多いということなのだ。



平日は週に1日はジムに行くとして、ビレイやそれに伴うクライミングのあれこれが理解判断できるようになるまで1年、それから外岩でもリードを始め、もちろん最初は支点のしっかりしたスポーツルートから始めて、やがて小川山などの「あれやこれや」が混じったルートのおおかたでそつなくできるようになるまで3年、さらにクラック系で3年、同時にマルチピッチルートも人に連れられて、20~30は経験し、トータル5年でリードが取れるようになるなんて、随分早いほうだとおもうんですけどね。



ジムでトップロープすら危うい状態なのにリードし出す人
ジムからいきなり外岩に向かう人
小川山などのトラッドルートに「ジムで5.11が登れたから」のノリでとりつく人

など見ていて、ええ!?と驚かされるような人たちは、決して少なくない。



(10年、5年が)本当に必要な事なら、あるいはその時、自分では必要性が分からなくても、「必要だ」と実際に考える人がいるのなら、それが「クライミング」というものだと、思うのが普通のような気がするんだけど…。

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クライミングも、ランと同じく、細く狭い尾根で、習得に時間がかかる活動、と言えるのでは…と思います。

元々、私がクライミングを始めたのは、時間がかかるから、というのが理由でした。

時間があるときに、その時しかできない活動をしよう、と思ったためです。

大体において、人の人生は、時間がある時はカネがなく、カネがある時は時間がないものです(笑)。

カネがあるときにはカネを使い、時間があるときは時間を使う遊びをするのが、正攻法かなぁと思ったら、それは外岩豊富な土地では、クライミング。

■ 登れそうに見えた…

始めてアイスクライミングをしたのは、岩根山荘ですが、岩根の氷瀑は、ごく至極まっとうに登れそうに見えました…。

とはいえ、それは、”見えた”のと”登れる”のは違い、初めてアックスをふるった時は、3本で腕が参ってしまいましたが…。

けれど、登れるんじゃないかと思った。 実際4年かけて、登れるようになりました。

私のクライミングは、自分が登れそう…と思った気持ちを起点にしている。

今回インスボンの登攀に行って、インスボンも、スラブなら登れるのかもしれない、と言う気が、どこかでしました。

しかし、それはきっと数年くらいはかかる話なのだろう…。

アイスだって、体験クライミングから、大滝をピンクポイントするまでには、4年かかっているのだから…。

クライミングは時間がかかる。けれど、時間さえ掛けさえすれば、誰だって登れるようになるんではないだろうか?

それがクライミングの魅力も言えるんではないだろうか?

何事も即席の成果は喜びが少ない。 大きな喜びには、大きな努力と時間の長さが必要なのであるから…

2017/10/11

海外クライミングのリスク

■ カントリーリスク

さて、グリーンクライマーズホームの所在地はラオスである。

万が一の怪我の時、一体医療機関は整っているのか?

それは、当然至極の、疑問である。

私の知り合いに、パキスタンで雪崩にあった人がいるが、肋骨が折れてもそのまま無処置で日本に帰ってきたそうである…(汗)。

つまり、パキスタンで医療処置を受けるくらいなら、受けないで我慢し、日本で受けた方が良いという訳だ…。

このようなリスクは、カントリーリスク、という言葉でくくられている。

言うまでもないが、カントリーリスクは、個別、固有だ。国ごとに違う。

■ 在留日本人との交流

たまたまであるが、ラオスでの登攀中、現地の医療機関に勤める日本人の女性と知り合いになった。言葉の面で苦労されているようだが、例えば、注射針の使いまわしなどの、非衛生的な処置は聞いていないそうである。

またかおりちゃんのお母さんたちと知り合いになったため、もあるが、現地日本人のコミュニティとも、つながりを持てた。

一般に…であるが、現地の在留外国人が定着しているような土地…もともと植民地であったような場所が多い…は、伝統的に外国人向けの医療機関の蓄積があるようである。

一方、内戦などで世情が落ち着かず、在留外国人がいないような国だと社会の余力が、そのような部分にまで巡っては来ていないかもしれない。

たぶん日本でも、長らく在留していた外国人に対しては、外国人向けの住宅、外国人向けの医療、言語サービスとお抱えだったと思う。

以前、大阪で勤務していた会社は外資だったが、本国から派遣されている経営幹部は、日本人の常識では考えられないような金額のマンションに住んでいるのが普通なようだった。

これは逆も真なりで、東南アジアなどで、日本から派遣されている支店長さんの事情を聴くと、現地では考えられないような、いわゆる豪邸にお手伝いさん付で会社から住まわされる事が多い。

どちらも派遣元からの配慮、という事情だ。在留外国人と言う歴史には、このような企業からの派遣という歴史がある。一般的にそうした歴史が確立している国の方が日本人にとって住みやすい環境が、時間的積み重ねと言う財産に寄り、確立されている。

ラオスでは、GCHのトポの後ろに、緊急時の病院リストが掲載されている。リストというほどの量はないが。

■ 事後処理の充実より、リスク回避の充実が重要

しかし、どんなことにも言えることだが、事故や危険が起こってしまってからの処置の重要性より、予防のほうが大事なことだ。

これは、例えば、病気への対応などでも言えることで、そもそも、予防の方が大事で、起きてから治療する、ということのほうがより重要度が低い。

レントゲン技術があり、縫合技術があることも重要だが、そもそもヘルメットをかぶるという知恵がきちんとあるほうが良い。

あるいは、分かりやすい例で行くと、滑落停止技術があるよりも、そもそも、滑落しない歩行技術がある方が良い。

クライミングに当てはめると、これはなんだろうか?

そもそも、自立したクライマーになること、だ。

私がラオスで気が付いたことの一つに、日本のクライマーは自分の力量を相手に正確に伝えるコミュニケーション力をあまり持っていないということだった。

普通、クライマー同士は、夜の食事の場で、交流し、今自分が取り組んでいるのはどんな課題か、グレードは何か、どういう課題が好きか?クライミング歴はどれくらいか?
そうしたことを話しながら、いっしょに明日登るパートナーを見つける。

一方日本人は、そうしたことを話さない… どちらかというと、交流をせず、仲間うちで偏り、孤立していることのほうが多かった。

そして、クライミングでバディを組むときも、パートナーチェックから、クリッピング時の声掛けも、相互コミュニケーションになっていない。

  分かっていて当然

という前提で話が進んでいくのだ。 これは、コミュニケーションの失敗である。

海外では分かっていて当然と言う形では、コミュニケーションは進んで行かない。むしろ、

 分かっていないかもしれない可能性を取り除くためのコミュニケーション
  (Trust But Check)

となっている。初めてロープを組む人と、クリッピング動作をするときは、「ロープ」と声に出すが、日本の人は、これをしない人が多い。

日本では、人工壁に行ってもそうで、ロープと声に出さないのはなぜなのだろうか…

というわけで、海外でのクライミングの適性は、たぶんコミュニケーション力にある。コミュニケーション力がないと、悪気がなくとも、ビレイヤーは、どのようなビレイをしてほしいのか、ワカラナイだろう。

大事なことは、コミュニケーション力をも含めた自立したクライマーになることである。

最初は誰でも知らない人である。そういう状態から、信頼関係を徐々に築いていく、ということが、一般に日本人は苦手なのかもしれない。

 ・事前に自分の経歴と相手の経歴を合わせて、いっしょに登る場合の安全管理について、想像を巡らせることができる。 例:どちらが先にリードするか?

 ・言語のすり合わせ 言葉は微妙に各国で違う

 ・初めてビレイしてもらう時は、落ちないグレードを選択する

 ・パートナーチェックは当然

 ・ビレイヤーを振り返って、ロープのたるみ、立ち位置などをクライマー側が指示できる

 ・クリッピング動作をするときは、ビレイヤーのために声を掛ける

 ・終了点に来たら、ロープをごぼうにもったまま(下のロープ)、ビレイヤーにテンションしてもらってから、体重を掛ける

 ・落ちてはいけないフラれる、箇所では落ちない

 ・ギリギリのところは、信頼関係が築けたクライマー(墜落を止めてもらった経験がある)クライマーとのみ、チャレンジする

 ・Trust But Check

上記以外にもあるかもしれない。クライミングで、墜落や怪我をしないためのリスク管理は、クライマーなら出来て当然のことである。

ちなみにこれは、グリーンクライマーズホームでは、誰もがこうしているようだった。

人は、朱にまじれば赤くなる、と思うので、リスクについてやみくもに恐れるのではなく、うまく回避しつつ、楽しくクライミングをするという、文化的影響を受けることができるということも、ラオスでのクライミングが楽しかった理由だ。


2017/10/09

初級クライマーへ グリーンクライマーズホームのススメ

■ なぜ海外が安全か?

ずばり、危険回避のためです。

国内岩場では、小川山がフリークライミングの聖地と言われていますが、その小川山ですらも、クライミングの初級者がリードするに適した課題…つまり

 ・ランナウトしていない課題
 ・1ピン目のクリップが遠くない課題
 ・ボルトの位置がよく考えられている課題
 ・そもそも課題数が少ない

という理由からです。これは、それだけクライミング(外岩)が、日本では愛好者人口が少なく、したがって、初級者向けの課題がないからのようです。

私が最初に登れるようになったのは、3ピッチ、5.7の”春のもどり雪”ですが、そこもランナウトしていることが核心、と言われていました…(汗)。

日本の場合は、例えば、5.9の課題だと、5.12を楽に登る人が初登者であり、プロテクション、つまりボルトの間隔は、その12の人の感性で適切だと考えられる間隔、になっています。

つまり、5.9がやっと登れるようになった人にとっての感覚と異なります。結果、5.9が精一杯でオンサイトしようとしている人に、大変危険、ということになってしまいます。

一ピン目も届かない場合すら、稀とは言えない頻度であります。

初心者時代と言うのは誰もが通る道なのに、その、もっとも危険な時代を安全に通ることができない。チータースティックなどが出てこざるを得ないのも、このような事情に寄るのでしょう。

特にリーチがない人にとっては、1ピン目が遠い課題など、非常に危険です。

結果、初見の者同士で、岩に行くことが、とても危険なことになってしまいます。

■ 旅行者ですら、楽しめるクライミング

ラオスで、去年私は初めての海外クライミングをしました。

驚いたことに、現地では、一般の観光旅行者が参加する、日帰りツアーの一環として、ターケーク、グリーンクライマーズホームでのクライミングは位置づけられていました。

確かに、安全管理がバッチリされていれば、トップロープでショートを登らせることには、あまり大きな危険はありません。落ちても、びよんとぶら下がるだけなので。

そのためか、非常に簡単な、5.4なんていう課題から、用意されています。

5.4なんて、日本ではみたこともありません(笑)。あっても誰も登らず、その課題を登ることが不名誉なことか、もしくは、課題として成立できないほど苔苔だったり。

一度、ためしにラオスで、5.4を登ってみましたが、登山道の鎖場のレベルでした。普段、鎖場の鎖を使わないで上り下りしている人には、何が難しいのかしら?となってしまうレベルです。


しかし、そのレベルから、5.5⇒5.6⇒5.7⇒5.8と一つずつステップをあげていくと…、クライミングでのリードという活動が、なるほど、と分かっていくのではないか?という気がしました。

私はすでにフリークライミングの経験があったので、フリークライミングで、もっとも易しいと考えらえているレベル、5.9から、一つマイナスした5.8からスタートしましたが、5.8だと使えるホールドやスタンスが多すぎて迷い、どうしてよいか分からなくなる、ということが分かりました。

という易しさですが、大抵の人は、どんなに立派な体格をしていても、このあたりのグレードからスタートです。

生まれて初めてリードした、と言っている西洋人の男性に会いましたが、5.8でした。

ちなみに、フリークライミング歴、何十年であっても、だいたい5.10代が一般のフリークライマーが登って楽しいレベルで、それは、まったくの初心者が登れる、5.8や5.9とそう大きく離れたグレードではありません。

それだけ、フリークライミングの場合は、グレードとグレードの間の難易度の密度が濃いです。

つまり、日曜クライマーレベルから、12が5本オンサイトできるというような、脱・日曜クライマーレベルへ行くのは、非常に大変で、大きな努力や献身、もしくは、才能が必要になるということです。毎日登っても、数年係るようなハナシ。

ですから、フリークライミング(含むボルダリング)を経験している人は、まったくの観光客レベルで、日帰り観光気分で、クライミングが楽しめる、と言うこと自体に、疑問を抱いてしまうかもしれませんが、実際、ラオスではそのような実態がありました。

■ かおりちゃん

そのような実例として…出会ったのが、かおりちゃんです。6歳、幼稚園生だったと思います。

かおりちゃんはお母さんともども、クライミング初心者で、グリーンクライマーズホームに登りに来ていました。日本語が聞こえたので、私が気づき、それでお友達に…。

とっても楽しくお友達になりましたが、彼女が与えられていた環境は、初めての岩場が外岩。

しかも、洞窟気分満点、鍾乳洞みたいな、石灰岩の岩場です。

きっと、初めて接するクライミングがこのような岩場だと楽しくて仕方がない!でしょう。

想像するに白石アシマちゃんは、外岩ばっかり登って楽しく成長したのではないかなぁ?

ちなみに、初心者はギアなどは一切持っていないし、ロープなんて言われても謎だと思いますので、一切のギアは、施設からの貸し出しです。

体一つで出かけて行っても、大丈夫。すべてがレンタル可能です。しかも、体験クライミングだから、トップロープを掛けてくれ、楽しく登らせてくれます。

これは、大人の初心者も子供の初心者も同じです。

ひるがえって、日本の岩場では、施設側が岩場管理者であること自体がめったにないので、このようなサービスはありません。

ので、日本に来た外国人観光客が、身一つでクライミングでも体験してみようか、とはなかなかいかない。

これは、例えば、韓国のインスボンでも同じです。クライミングを愛好者以外が登るということは、めったにないので、日帰りツアーなども出てはいません。(韓国語で読めればでているのかもしれませんが…)

これがヨセミテとなると、現地ガイドが雇えたりもするそうですが、それは、その施設の人というよりは、日本と同じように無料で開放されている岩場を現地ガイドが案内する、というような状況だと思われます。

一方のラオス、グリーンクライマーズホームでは、基本的には、その施設の宿泊者のみが、その岩場で登っている、という状況にあり、現地の人はほぼ皆無。

一泊二日で来ていた英語圏の人が現地で働いているそうでしたが、現地で働いている外国人であってラオス人ではなかったです。

つまり、そこにいる人達は、基本的にみな、同じ宿泊地で宿泊している仲間ということでした。

■ 課題数が多い

そして、課題数が大変多いのです。

一般に、同じグレードの課題をたくさんの量登ることで、より自然な形で、無理なくグレードを向上させていくことができる、と言われています。…が、問題は、日本の岩場は、課題の量が足りないことです。

5.10Aへ進む前に、5.9のオンサイトを10本登りためする…というようなことは、日本ではとても難しいです。

これは、北海道などでは、とても顕著らしく、難しい課題しかないため、レッドポイントが主体にならざるを得ないのだそうです。

レッドポイントと言うのは、同じ課題を何度も何度もトライして、やっとこさ落とす、という方法です。

レッドポイントでのグレード更新は、9割落ちている登り方、というわけです。落ちることを前提に登らなくてなりません。

それは、他に登る課題がないから!

本来、オブザベーション(観察)で、これなら登れるのではないか?と思われる課題を登ってみて、その目論見が外れ、登れなかったなぁという経験を積み重ねることで、落ちないで登れるグレードやルートファインディング(オブザベーション)能力がつくと思いますが、課題数が少ないとそれもできないわけです。

その点、ラオスの場合は、課題数がたくさんありすぎて、同じグレードの課題をつぶすだけでも、だいぶかかりそうなほどでした。

しかも、ランナウトしていない。ボルト間隔が適切で、私は背が低いリーチの短いクライマーですが、それでも怖いと感じさせられることが少なかったです。

■ スポーツクライミングが根付いている海外

思うに、クライミング文化と言った時、死を意識せず、ファンクライム、楽しいクライミングとしてのクライミングが根付いているのが、海外、特にヨーロッパのクライミング文化のようです。

ラオスは、ドイツ人が開拓した岩場ですので、ドイツのクライミング文化が根付いているのかな?と思いますが…

ラッペルダウンで作られたボルト式の岩場、つまり、ボトムアップの、ヨセミテ風ではなく、ヨーロッパ風の岩場は、日本では、どちらかというと、あまり尊敬を受けない文化的気質があります。

つまり、危険でないから価値が低い、ということなのですが…。より危険な方がより大きな敬意を受けるという伝統は、もしかして、エルキャピタンをフリーソロしてしまったアレックスオノルド君を輩出したアメリカ的伝統が、日本では先に浸透した結果なのかもしれません。(余談ですが、それが、一般登山者の価値観にも影響して、一かバチかの賭けごとが登山の本質だと誤解されているかもしれません。)

記録を狙うような先鋭的クライマーにとっては、その価値観でいいかもしれないですが…一般大衆がその価値観だと、タダの趣味なのに、初心者時代に墜死してしまいかねません…

何しろ初心者と言うものは、何が登れて、何が登れないのか、よく分かっていないものなのですから。

というわけで、初心者ほど、海外の岩場へ行ってみるのが良い、と思います。そこには、”死を覚悟しなくても良い岩場”があります(笑)。

ちなみに日本では、アルパイン的な三つ峠でも、フリークライミング的な小川山でも、ある程度、死を想定しなくては、リスク回避できないです…。三つ峠では、”セルフを取る”というクライミング界の常套句を理解できないまま、自ら外してしまって、自分自身のミスで亡くなってしまう人がいますし、小川山では、一般的な普通の墜落に因る事故が後を絶たないです。死は、高山のアルパインルート…一般にフリーよりかなり易しいが総合力が必要…では、より顕著です。日本の岩場では、大なり小なりの死がついて回ります。

その点、ラオスのクライミングは、ボルト間隔にせよ、グレーディングにせよ、終了点の整備にせよ、安全ということが第一になって、純粋にクライミングそのものを楽しむ、ことが大事にされているのが分かります。

もしかしたら、世界には、グリーンクライマーズホームのようなクライミング初心者に適した岩場とサービスがあるのかもしれないのですが…。

私はまだ、クライミング初心者なので、もし、そうした岩場をご存知でしたら、教えていただけると嬉しいです。