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2024/08/28

【アルパイン】【遭難情報】平出さんたちの、かなり正確そうな情報が出てきています

■ 今までの、”英雄視&扇動” の報道とは一線を画した、ジャーナリズムの良心を感じる報道

が、

 石井スポーツ (今見たら朝日でした…)

から出ています。これで、グッと私の石井スポーツに関する株は上がりました☆
(九州で見たトンデモクライマーが石井スポーツの人で株は急降下していました

さすが、天野さんがいて、目を光らせているだけありますね!

■【解説人語】K2で世界的な邦人登山家が遭難 経験豊富な2人に何が 南米最高峰アコンカグア同行の記者が語る
 

■ 要点

1)条件は良かった
2)敗退こみだった(決死ではない)
3)コンテだった (核心部ではない)
4)まだ7500だった (核心部ではない)
5)氷とともに落ちた


これだけを書いても、本格的な山登りをしない人には、意味が分からない、というのが、こうした遭難情報を評価する際の難しい点です。


私は山登りでは、アルパインクライミングという一般登山の人にはできない、ロープが出るクライミング、いわゆる本格的な山登り…を行うことができます。

実は、そこまで、自力で、つまり、自分の力で、たどり着いた経験がある人でないと、こうした先鋭的登山は、まったく、海のモノとも、山のモノ、とも分からず、全く評価も、推測もすることができないのです…何十年、山に登っていても。


40年ほどの昔は、多くの人がアルパインクライミングをしていたので、多少なりとも正当な評価ができる人が、一杯いたのですが、今ではできる人がほとんどいなくなった…という業界事情があり、そこに
 
 付け込んだ人


が、本当のところは、すごくもない登山を、


 俺ってすごいでしょー


と宣伝するのが、ここ20年くらいの流行になっています。代表事例は、栗城劇場です。

一般クライマーもそんな感じで、実は全然すごくない記録をすごいということにする、のが、流行中。

実は、三浦さんもそんな事例の中にひところ、あったりしました。師匠と見た、NHKのスキー滑走の映像では、スキーを担いで上がるルートは、その山にあるバリエーションルートの中で最も簡単ルートを選んでいたのにも関わらず、最難ルートと評しており、え?!NHKよ、お前もか?!と思ったのでした。


■ 私はこれは、師匠と一緒に見たから、分かった

…のでした。

大体、海外のルートなんて、日本人の一般ピープルが知っている訳ないだろう…と、あのNHKですら、高をくくって報道しているのか?それとも、裏取りをさぼったのか?はたまた、両方なのか?

最近、NHKは、中国人スタッフによる失言で炎上していますけど、昔から丸投げ体質、なんですかね。

最近、マスコミは、マスゴミ、であることがバレてきています。

テレビの撮影で、歩荷で呼ばれて行きました、みたいな人は、本格的な山登りをしていれば、たくさん話を聞きます。村上先生もそのような一人でした。

で、その人たちの話を総合すると、NHKって言っても、登山知識は、素人さんみたいでした…

一度、北大出身のNHKカメラマンの米山さんと沢をご一緒したことがあるのですが…あの時は私が買いたての赤キャメが役立ったのだった…、米山さんも後で聞いたら、懸垂したらロープを、実は切っていて、足りなかったとか、ええ~?!な冒険をしているみたいでした…。いや~、北大も、九州よりはまともだと思いますが、登山界を襲っている倒錯とは、無縁でいられなかったみたいです。誘惑に負けやすいのが男性。

というか、北海道の山から来たら、山梨の山や沢なんて、ちっさくてチョロいってことになっちゃいますよねぇ…?そこで、リスクのスパイスが欲しくなる?? まぁ、仕方ないです。

話がそれましたが、いわゆる先鋭的登山の世界は、無知で当然の一般市民だけでなく、アルパインクライミング人種からも、きちんとした評価がされにくい状況にある、ということです。

それは、日本の山は小さく、標高も低いので、規模と標高による困難度のアップ具合が、仲間である他のアルパインクライマーからも理解されずらいから、ということです。国内にないからです。海外までいろいろ登りに行ける優遇的地位の人には、それなりに正確に解説してもらいたいものです。若い方はやってくれています。(例:たけちゃんねるのセユーズ)

現代の最高峰に属すクライミングは、普通にフリークライミングでやるクライミング(マルチピッチ)を標高5000や6000でやるものが主流のようですが、そんな標高でやったら、そりゃしんどいはずですが、それがどんな感じか?周囲も分からないということです。

それで結局、評価できる人の人数が少ないので、内輪での評価になるのです。これはピオレドール賞も同じです。

もちろん、平出さんや中島さんが行っていたのは、無雪期のフリークライミングではなく、いわゆる雪稜です。

■ 雪稜とクライミング

雪稜でも、上級者が登るようなのになると、稜線から、壁、つまりクライミングの領域、になってきます。この分野で入門ルートとされているのは、赤岳主稜です。

私は、パートナーがいなかった&当時所属していた山岳会でも俺らで連れていく能力はありません、ということで、一人で隣の阿弥陀北稜に行っています。

まぁ、壁っぽいのは出てきましたが、一瞬で、雪稜にアックスを使ったボルダリングが一瞬だけ出てくる、って感じでした。赤岳主稜では、マルチピッチになるはずです。

マルチでは、私はセカンドですが、赤岳主稜よりも困難な、ミックスルートの荒船山の昇天というのに行っています。岩と氷のルートで傾斜もたっており、5.9は越えていると思うので、本格的~って感じだと思いますが、4Pしかないし、セカンドで行っているので、自分で登ったわけではありません。

もちろん、セカンドであっても、何か不測の事態が起きたときに、十分な技量がないと、自分で登れなくなっっちゃったり(例、自己確保で登る方法を知らない)、リードクライマーの足を引っ張って、完登できなくなり、ヘリ出動になります。(例:当方の白亜スラブ)

そもそも、そういう危険性がある人は連れて行ってもらえない、という場所です。昇天は、岩の技術アイスの技術も両方必要で、M5くらいだと思います。

余談ですが、平出さんたちの気象アドバイスをした猪熊さんとも面識がありますが、M5しか登れない…と私がいうと、それでもすごい!と褒めてもらいました…。ですよね。ほっとしたのです。あの時の猪熊さんの言葉には救われたなぁ。

ちなみに、九州では、”M5”という言葉自体が分からない人ばかりでした。

また、雪で使う支点として定番のスノーバーや自然物を使ったルート、雪稜、としては、3月に立山の真砂尾根というのをしています。ここはクライミング力は必要なく、歩くだけです。それでも、危険なのでロープを出して確保します。これは登山道そのものがなく、稜線を伝いますので、高所登山に近い登り方です。

私がロープをいらない箇所で、懸垂でロープを身長180cmの30代男性が出していましたが…、九州で、私をチキンだと言って非難する人はこの男性をなんと評するのかな? 御坂では先輩たちは、「こんなところで」とか言わず、「ヤレヤレ」とも言わず、普通に出してあげていました。

さて、以上のような経験がありますので、一応、雪稜でどのような技術が必要か、冬壁でどのような技術が必要かは知っており、体験レベルではありますが、何が起こるのか、知ってはいます。

■ そもそも…

さて、その経験を踏まえて話しますと…

いわゆるトンデモ登山というものは、

 そもそも、選ぶルートが、実力不相応

なのです。

この平出さんと中島さんのK2は、私は日ごろ、平出さんが選んでいたルートが、渋いというか、ほとんどの人が知らないような、聞いたことがないような山が多いこと、しかも、登山家としての名声は確立済み、なことから、なんでいまさらK2?と思ったのでした…

…というのは、K2って、今エベレストみたいに商業登山に侵されて、行列のできる山になっており、K2のラッシュアワーってこんなのです。


https://sg.news.yahoo.com/k2-rush-hour-climbers-wait-123846863.html より引用

もちろん、一般の人は知りませんが、こんな情報は、普通にただ英語が話せるだけで、クライマーの能力としては、一般クライマーの私みたいな人にも回ってきます。海外登山通の平出さんらが、知らないはずがありません。

そのため、このような状態のK2にバリエーションルートといえども心惹かれるとは、なんか、”平出さんらしくない”という印象を持ちました。

しかし、らしくない、の中に、実力不相応、という部分は含まれていなかったようだ、とこの動画を見て結論しました。

魔が差した、つまり、ド素人さんにも分かる山に登って、分かりやすい栄誉に浴したい

という話ではなかったみたい。

ちなみに 一般クライマーといえば、アルパインクライマーから、フリークライマー、はては、ボルダラーまで、この一発逆転の分かりやすい栄誉に浴したい、無知な人からすら褒められたい、という欲に負けて、実力不相応のルート…だいたい有名なルート…を選択をすることが、事故の大半の原因となっています。(例:俺5.11登れるから、北岳バットレス四尾根)

■ 条件は良かった

「悪いね!」は、クライマーにとって、倒錯した喜びです。

悪いね~というのは、登りにくいという意味ですが、クライミングって、やっている間に、様々な苦難に耐性が付いてくるので、”もっと悪くても、登れちゃうよな~俺”、となってきます。

その魔力… は、強力で、オリンピックで競う、競技では、どんどんホールドを

 悪く

していくのです。

悪いにも、いろんな意味合いがありますが。一例は、遠くする、です。で、5m先にあれば、人類にとって不可能ですが、3m先なら届く人もいるでしょう。そこで、優劣つけようとして、やりすぎちゃった、のが、森秋彩選手の事件でした。

アルパインクライミングにとっては、悪さ、は天候です。なので、猪熊予報士の助言を得て登っています。一般クライマーもヤマテンという天気予報を、山別に取得するのが、山ヤの通例です。

  条件が悪いときには、ギリギリのチャレンジの山はしない… 

ことが大事ですが、このギリギリ度合いを間違う人、多数。

例えば、八ヶ岳の天狗岳とか、それこそ阿弥陀北稜とか、ルート自体が簡単な場合に、このチャレンジはギリギリではないという前提を持ってしまったがために、悪天候でツッコんで死んでしまうのが大学山岳部の通例となっています。

ルートが簡単なことと悪天候って別の話ですよね。それが分からなくなるのが人間なのです。

体力的にゆとりがあっても、チャレンジの山を、悪天候時に行ってはならないのです。

悪天候では、ハイキングみたいな山でも、風を遮るものがない=低体温リスク、というリスクがあることをハイキングの時点で学んでいないといけないのです。

従って、悪天候リスクを学ぶには、逆に言えば、ハイキングレベルの山に、悪天候時に出かけてこないといけないのです。もちろん、すぐに引き返せる状態で。

平出さんたちは、このトラップにも引っ掛かっていなかった。つまり、良い条件の時に行っているので、とても保守的だということです。イケイケ登山の反対です。




■ 敗退こみだった(決死ではない)

敗退こみ、というのは、危険を感じたら、引き返す心づもりがある、ということです。

イケイケ自慢&危険なクライミングを好む人は、「敗退なしで!」と言います。こういわれたら、「一人で行ってきて」と言い返しましょう。

敗退を想定するには、ロープ長の長さを計算する必要があり、また、敗退のために余分なロープを持っていくことがあります。

決死の覚悟で行くルートがかっこいい、という、間違った思い込みが、登山界やクライミング界には蔓延しており、特に難しい山がない地方では、多数派です。持病の薬を持ってこなかったり、ピンチ食を持ってこないで山に入る人が、その自慢話をしたり、わざとアルコールを飲んで登って見せたり、と、敗退用のロープを持ってこないで山に入るクライマーが武勇伝にしたりと、倒錯が非常に多いです。

余談になりますが、この倒錯の代表事例が、フリークライミングの分野では、ランナウト自慢です。

さらに余談で申し訳ありませんが、そうした用心のための余分を持って山に入る人は、余分に持っている、と思われているので、持ってこない人=危険人物に、利用されます。私は利用されたことが、合計5回くらいあります。

平出さんたちはこれについても、良い判断で、事故につながるような悪い判断は、していなかったようです。

■ コンテだった (核心部ではない)

これは、クライミングをしていても、難しいかもしれません。

コンテというのは、簡単なところを素早く通るために使います。通常はスキルが下の人が前を歩き、後ろが距離を適当に調整してくれます。御坂山岳会の時代に、先輩がやってくれました。

一度、台湾で、クラックの5.4が、あまりにも簡単だったので、コンテでもいいのでは?とアメリカ人のクライマーに持ち掛けると、彼は5.12まで登れる人でしたが、断られました。そこは、20mはあったと思いますが…5.11がギリギリ登れる程度しか登れない私ですら、カム3つ…というやさしさだったのです。

それでも、コンテは断る、のは、これがクライミングの垂直のレベル感だからです。

一般的には、コンテは落ちることが考えられないくらい簡単で、落ちたとしても摩擦ですぐに止まりそうな、巻き込まれが考えにくいレベルの、とても簡単なところで出します。

ガイドが出すタイトローピングも一種のコンテですが、私は自分がされる側はいいけど、する側には体重的に向かないので、自分では出しません。される側になるにしても、岩の隙間を通って、保険を付けてから、しかつなぎません。

フリークライミングしかやらないクライマーは、この技術を知らない人がほぼ9割で、マルチで出てくる、歩くだけの簡単な個所でロープを解いて、その箇所でほっとして、転んで大事故になる、というのが、定番の遭難セオリーです。

こうしたフリークライミングのクライマーは非常に多いです。フリークライミングで使うルートは、クライミング自体が易しくても、場所が危険なことが多いからです。上記の私の台湾のクラックのように。

さて、これで、平出さんたちが、とても簡単なところで遭難したことが分かりました。

■ まだ7500だった (核心部ではない)

まだ7500というのは、山頂までまだまだで、まだアプローチの箇所だということです。

登山にも、核心部ってありますよね。 例えば、不帰だの、ジャンダルムだの、いろいろ怖そうな名前がついていたりします。名前がついていない普通の登山道でも、長さが核心だと、日の短い秋に登れば、暗くなってしまい、危険に突入するかもしれません。

まぁ、要は、”誰でも用心して、気合を入れて登る箇所”と、そこまで行かず、”気楽に登っている箇所”、つまり、アプローチ、と二つの心理的に異なる箇所があるということです。

遭難された箇所は、まったく核心部ではなく、アプローチだったとのことで、登りたかったルートの核心に触れずに亡くなったとすれば、


 心残り


だっただろうなぁ…無念だっただろうなぁ、と思いました。


■ 氷とともに落ちた

氷とともに落ちたという目撃情報があるそうです。とすれば、アプローチでの落氷による事故、ということになりそうです。

私の眼裏に浮かぶのは、北岳バットレス4尾根に御坂山岳会の先輩と3人で出かけたときのことです。

まだ下部岩壁のとっつき、つまりアプローチ…にいるのに、ブーンと何か音がして、仲間の初心者男性のヘルメットに落石がかすめて行ったのです。

ブーンって音は、ヘリかなにか?みたいな感じでした。でも、石のサイズは、小石レベルだったと思います。

かすめた男性本人は、それを見ていないので、え?何?くらいの認識でしたが、私と先輩はそれを目撃して、無言で敗退を決めました(笑)。今日は危険だ。

雪上で、落石や落氷があっても、音がしない上、音に気が付いたときは、加速がついており、すごい破壊力で、しかも、避けようにも、気が付いたときにはもう遅いのです。当たったら死にます。

岩場のルートでも、RCCのボルトがひん曲がっている=落の痕跡です。

その北岳の時は、先輩と無言で通じ合った瞬間でした。当たり損ねた?仲間は、未練たらしくルートを眺めていました。

その時は、その人を説得するために、「このルート、女性にはちょっと難しすぎるね」みたいな言い方を先輩がしたと思うのですが…記憶があいまいですが…

その言い方を、その未練っぽい仲間を体よく説得する材料に、私が使われているなとスッと感知しました…。もう帰りたい…帰ろうよ、と言い出すのは、男性には難しく、女性には易しいのです。

で、無事帰ってきました(^^v)。

これだけのリスクの解説を、現場でするのは難しく、これが、山の経験値、と言われるものの中身です。

そして、同じ経験をしても、解釈が多様だ、ということの意味です。落を見なかった仲間は、俺だったらもっと行く、と思っていたでしょう。今回は女がいるから、しゃーないな、とすら思ったかもしれません。自分は守ってもらった立場なのに…。

…というようなこと…立場の違いによる見解の相違…が、かなりな頻度で起こるのが山です。

でも、これが男1対男1だったら?行きたいという人に、言い返すのは難しく、さらに、女性1対男性1なら、男性は絶対に俺の意見が上だ、俺が行くと言ったら行く、と思うでしょう…。 

実際、自分の意見が通りやすいから女性と組む、という人は多いです。

女性の側からすると、巻き込まれ事故ですね。

で、平出さんたちの話に戻ると、


 雪上の落って、予見不可能


なのです。もちろん、気温が上がって緩むと、落石も落氷も、落ちやすくなります。

雪が落ちる現象、といえる雪崩の危険があるルートでは、早朝と夕方しか登らない。雪崩を避けるためです。

アイスクライミングでも、気温が十分にマイナスにならないと登りません。12時から14時は基本的に要注意で、逆に寒ければ寒いほど安全と言えるのです。

先日、立山で、11月に八ヶ岳に行ってきた、と自慢げに語るトレランの人に会いましたが、八つの地元の人は、11月は、登山道ですら気温的に十分に凍っていないので、落が多いから、八つには行かないんですよ。かなり体が引き締まった人だったので、山ベテラン風でしたが、分かっていない人だなぁと思いました…。

このように、冬季のクライミングや登山をやらない人は、一生かかっても、冬季のリスクについては疎いままです。

むろん、平出さんたちは、このことに全く当てはまりません。

彼らほどの経験者でも、落には、対応のしようがない、ということなのです。一般のクライマーが、カッコつけて、解けかけた氷瀑なんて取り付くものではありません

氷本体が解けなくても、上から何か落ちてきますよ?そして、それは避けようがない、完全に

 運

の世界です。

登れたとしても、偶然、運が良かっただけのことですので、俺の実力だ、と慢心するのは辞めましょう。慢心しているかどうか?は記録の書き方で分かります。

読んでいて、相手の実態を知っているために、こちらが恥ずかしくなるようなのを読んだことがあります…

■ まとめ

以上で、平出さんたちがわざとリスクに近づいて行ったのではなく、


 やむを得ない事情


で、命を落としたのだということが分かった解説でした。


ご冥福をお祈りしています。