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2026/06/27

【翻訳】Climbing誌に興味深い記事が出ました

https://www.climbing.com/skills/humor-how-to-lie-become-better-climber/

記事:どうやって嘘をでっちあげるか教えるよ 


1. 不便なルートを選ぶ

まず、「メガプロジェクト」を試そうとする他の連中を遠ざけることだ。もし新入りの有力クライマーがふらりと現れて、君の「最高難度の課題」を初見で完登してしまったら、その時点で万事休すだ。人里離れた場所を選ぶことで、野次馬を寄せ付けないようにしろ。「ドーン・ウォール」はエル・キャピタンにある全32ピッチ、いわゆるハードなフリークライミングのルートだ。それだけでも大半の人間は近づこうとしない。確かに、1ピッチ目は妥当な5.12かもしれないが、それが実はガバホールドだらけの5.2じゃないと確認するために、わざわざ15ピッチ下まで懸垂下降しようとする物好きがいるだろうか? トミーとケビンは、科学的な何かを理由に「このルートは極寒の時期に登る必要がある」と我々を納得させた。真冬のエル・キャピタンを半分も下降して、スタートホールドすらつかめないほど難しそうな場所をわざわざ確認しに行くやつがいるか? 私なら行かない。同様に、ナレの「Burden of Dreams(V17)」はフィンランドにある。それだけで、ほとんどのクライマーを遠ざけるには十分だ。

2. 長期間そこに留まる

アダム・オンドラが「Jade(V14)」を初トライで完登しただって? 「それは随分と気楽な午後だったようだな」 ドーン・ウォールの初登に7年もかかったのかって? 「なんてことだ! 献身と人間の精神の勝利を感じさせる素晴らしい物語だ!」

難しいことを達成するには、本当に時間がかかるものだ。もし君が「不可能に近いことを成し遂げた」と人々に思わせたいなら、「何年もかかった」と吹聴しろ。素朴な疑問だが、トミー・コールドウェルがドーン・ウォールにこれほど時間を費やしていたのは、単に債権者から逃げていただけではないと誰が断言できるだろうか? おそらく彼は姿を隠したかっただけで、エル・キャピタンにいる理由を嘘で塗り固め、その話が雪だるま式に大きくなったのではないか。いつの間にか彼は「逃亡中」ではなく「人間の可能性の限界を押し広げている」ことになっていたのだ。トミーがドーン・ウォールの上に隠れていた理由は他にもたくさん考えられるが、どれも彼の指(人差し指)が欠損している理由を説明するものにはなっていない。要するに、大規模なクライミングの不正というものは、長期的な投資なのだ。「夢の」クライミングルートを選んだら、まずは時間を潰すことだ。ポータレッジ(吊り下げ式テント)でくつろぎ、ネットフリックスのリストでも消化しておけ。もしそれがボルダリングの課題なら、森で昼寝でもしていろ。「自分はそこにいるんだ」と人々に示す必要があるからだ。「Burden of Dreams」周辺のフィンランドの森を探せば、長年の仮眠によって地面にできた、ナレ・フッカタイバル型の窪みが見つかるかもしれない。

3. メディアを作る

動画や写真がなければ、それは「なかったこと」と同じだ。自分の登攀を証明するにはメディアが必要だ。トミーとケビン・ジョーゲンソンには、ドーン・ウォール登頂を記録するための才能あるメディア制作チームがいた。非常に優秀な連中だ。彼らなら、カメラの角度を調整してピッチを25度も急に見せたり、平坦な地面をフォトショップでドーン・ウォールの一部のように見せたりすることなど朝飯前だろう。彼らが実際にそうしたと言っているわけではない。ただ、彼らにはそれができるだけのスキルがある、と言っているだけだ。それだけのことだ。

幸いなことに、ハードなクライミングとは、大半が「回復」や「好条件待ち」と称して座り込んでいる時間である。クライミング場所の近くで撮ったライフスタイル写真でインスタグラムを埋め尽くせば準備完了だ。たまに、何も特徴のない岩のアップを投稿して「ここが核心(核心部)のホールドだ」と言っておけばいい。

最終的には、映画を公開しなければならない。クライミングは「難しそうに見えさえすれば」いいのだ。大声で叫び、失敗するシーンを見せろ。手元を睨みつけて怒っているカットは必須だ。確かに「Burden of Dreams」は映像では不可能そうに見えたが、一部のV3(初心者向け課題)だって撮り方次第でそう見える。必死に努力しているように見せれば、人々は信じてくれる。それを「演技」と呼ぶ。

4. 共犯者を見つける

登攀の事実を固めるにはバックアップが必要だ。「再登者」という存在だ。これは君にとっても共犯者にとってもWin-Winの関係だ。君は「第三者の証明」を手に入れ、相手は履歴書に輝く素晴らしい「完登実績」を手に入れる。アダム・オンドラはドーン・ウォールをわずか数週間で片付けた。努力が必要だったように見せかけるには十分な長さだが、疑念を抱かせたり感謝祭に遅れたりするほど長くはない。オンドラはトミーとケビンのハードな登攀を「裏付け」て、英雄として帰国した。彼が誰かの秘密を暴露すると思うか? ありえない。

ナレのV17について言えば、ダニエル・ウッズとジミー・ウェッブがカメラの前で「本当に、本当に難しい」と同意した。ボルダラーたちにとっては、それで十分な「証拠」になったのだ。

もし誰かが君の嘘を暴こうとしても、ただ嘘をつき続けろ。十分な期間耐え抜けば、ケリー・コーデスが君についての本を書いてくれるだろう。それだけでも、なかなかクールな功績と言えるはずだ。


クライミング界の伝説的な達成を皮肉的に解体し、その「虚構性」や「演出手法」を論理的に解説したものです。

これを「実績づくりのメカニズム」として抽象化・構造化すると、他者の信認を獲得し、一種の「ブランド」を構築するための以下のステップに分解できます。

実績構築のメカニズム:信認獲得の構造

このメカニズムの本質は、「客観的検証が困難な領域において、いかにしてナラティブ(物語)を支配するか」という点にあります。

1. 参入障壁の演出(権威の孤立化)

  • 物理的・心理的な不可侵領域の設定: 誰もが検証に来られない「物理的な遠隔地」や「過酷な環境」をあえて舞台に選ぶ。

  • 参入コストの提示: 難易度やコスト(時間、経済的負担、苦痛)を強調することで、他者の参入を物理的に排除し、その領域の「独占権」を確保する。

2. 時間による「コミットメント」の証明(物語の正当化)

  • 投入時間の長期化: 成果が出るまでに長期間を要したという事実は、現代社会において「献身」「努力」「情熱」という美徳として変換される。

  • 不都合の合理化: 停滞や失敗の理由を、科学的・論理的な文脈(温度、体調、技術的調整)に置き換えることで、周囲の納得を引き出し、疑念の目を逸らす。

3. メディアによる「リアリティ」の再構築(認識の操作)

  • 情報の切り取りと演出: 素材(写真・動画)の画角や編集により、情報のバイアスを操作する。事実(事象)そのものよりも、事実がどう見えるか(印象)を優先する。

  • プロセス展示の重要性: 完璧な成功だけでなく、「苦悩」「失敗」「怒り」などの感情表現を含むドキュメンタリー的要素を組み込むことで、人間味とリアリティを付加する。

4. 相互承認による「虚構」の社会化(エコシステムの構築)

  • 共犯関係の形成: 実績を裏付けるための「検証者」を配置する。この検証者にも実績の恩恵(名声、キャリア)が還元される仕組みにすることで、相互の保身が働く構造を作る。

  • 検証の放棄: 権威ある人間が「これは本物だ」と一言発するだけで、大衆は細部を検証することをやめ、それを「真実」として受け入れる。

まとめ:実績づくりの公式

実績 = 選定した舞台の過酷さ×{投入時間)+(演出された物語×権威による承認)

この論理によれば、実績とは「客観的な事実」そのものではなく、「周囲がそれを事実であると信じざるを得ない情報空間の構築」そのものを指します。

今回のテキストは、クライミングというスポーツの文脈を借りていますが、この構造はビジネス、学術、SNSインフルエンサーなど、あらゆる「評価」が伴う分野に応用可能な、人間心理の隙を突いた極めて強力なフレームワークと言えます。


これで思い出したのは、田中カンヤさんなんですよね。なんで栗城さんが一世を風靡して、田中さんがあれだけ大変なことをしようとしても、スルーなのか?メディア戦略がない、と言うことだとしか思えない。


つまり、日本のロッククライミング雑誌、登山雑誌がアホだとしか思えないんですよね。