2026/03/07

「終わらない年功序列」こそが、岩場の私物化を温存させる真の構造

 若手って言っても50だいです。


仰る通りですね。そこが日本のクライミング界の、より深刻で「笑えないリアル」です。

世間一般では「ベテラン」や「実務責任者」であるはずの50代が、いまだに70代・80代の開拓者(大御所)の前では「若手」として振る舞い、忖度を続けている。 この「終わらない年功序列」こそが、岩場の私物化を温存させる真の構造です。

50代「若手」層が抱えるジレンマ

この世代が動かない(動けない)のには、いくつかの現実的な理由があるはずです。

  • 「恩義」の呪縛: 20代の頃にその開拓者に岩を教わった、ルートを引いてもらったという個人的な恩義があり、技術的に疑問を感じても口に出せない。

  • コミュニティの維持コスト: 自分が異を唱えて開拓者がヘソを曲げ、地権者との交渉などを放り出されたら、その岩場自体が使えなくなるという恐怖。

  • 「逃げ切り」世代: 自分たちが現役で登れるあと10〜20年、ボルトがギリギリ持てばいい、という無意識の(あるいは意識的な)妥協。

構造的な「詰み」の状態

50代が「若手」として沈黙し、30代・40代の本当の若手はジムの中に閉じこもり、岩場では70代の「王」が君臨し続ける。これは、**「文化の継承」ではなく「資産の食いつぶし」**です。

  1. 50代が「壁」になる: 本来なら改善を主導すべき実力ある50代が忖度することで、さらに下の世代に「岩場は面倒な人間関係の場所だ」という絶望感を与えてしまう。

  2. 検証の不在: 50代が「あの人はああいう人だから」と苦笑いで済ませることで、ルートの欠陥や安全性の欠如という「客観的な事実」が、感情論の中に溶けて消える。


「改善」ではなく「断絶」のすすめ

日本中で起きているこの状況を「改善」しようとするのは、正直、徒労に終わる可能性が高いです。なぜなら、その構造自体が「変化を拒むこと」で維持されているからです。

だとすれば、最も効果的なアクションは「改善」ではなく、**「価値観の断絶」**かもしれません。

  • 世代間の断絶: 50代までの「忖度クライミング」を冷ややかに見つめ、彼らのルール(腐ったボルトに命を預ける遊び)を共有しない。

  • スタイルの断絶: 「ボルトがあるから登る」という彼らのゲームに参加せず、最初からボルトなど存在しないかのように振る舞う(あなたの仰るトラッド・スタイルなど)。

最後に一つ、伺わせてください

この「50代すら若手扱いされる停滞した空気」の中にいて、あなたは**「誰の許可もいらない、自分だけの純粋なクライミング」**をどこに見出そうとしていますか?


アクセスカウンシル

 日本中でこの「岩場の私物化と老害化」が起きているのは、日本のクライミング史が**「開拓者=絶対的な功労者」**という情緒的なリスペクトの上に築かれてきたからです。

しかし、欧米などのクライミング先進国や、日本の一部で成功している事例を見ると、この閉塞感を打破する「現実的な改善策」はいくつか存在します。

構造を「個人の所有物」から「コミュニティの共有財産」へ移行させるための、3つのアプローチを整理しました。


1. 「アクセス・カウンシル(地域団体)」の法人化と世代交代

個人(開拓者)に交渉や管理を委ねるのではなく、組織として地権者や行政と向き合う体制を作ることです。

  • 情報の公有化: トポやボルトの状態を、特定の個人の頭の中ではなく、クラウドや共有のデータベースで管理します。

  • 受益者負担の明確化: 寄付金や協力金を募り、「金を出しているのだから、安全管理(リボルト)を要求する権利がある」という空気を作ります。

  • 「功労者」の勇退: 開拓者を「顧問」などの名誉職に退かせ、実務(リボルトの判断やルール作り)を現役の強いクライマーやガイドに引き継ぐ仕組みです。

2. 「技術的な実力」によるサイレント・テイクオーバー(静かな乗っ取り)

政治的な話し合いが通じない相手(老害化した開拓者)に対しては、圧倒的な「技術の差」を見せつけることが有効です。

  • ボルト無視の完登: 腐食したボルトをクリップせず、カムやナッツだけでより美しく、より困難なラインを登る記録を積み上げます。

  • SNSでの可視化: 閉鎖的なコミュニティの外に向けて、その岩場の「真の状態」を客観的に発信し続けることで、密室での独裁を不可能にします。

3. 「ジム文化」と「外岩倫理」の再接続

現在、ジム店長が「好事家が行くところだ」と突き放している状況が、最大の問題です。

  • 教育のプロ化: ジムが「外岩への登竜門」としての責任を認め、公式なスクールとして岩場を利用し、整備費用を分担する。

  • 「消費」から「維持」へ: 登るだけの「消費者」ではなく、岩場を守る「維持者」を育てるカリキュラムをジムが持つことです。


改善を阻む「最大の壁」

日本でこれが進まない最大の理由は、**「波風を立てることを嫌う、実力ある若手の沈黙」**です。

力のある人間ほど、面倒な人間関係を嫌って「あそこには近づかない」という選択をします。

その結果、岩場には「声の大きい老人」と「何も言えない初心者」だけが残り、腐敗が加速します。

あなたにできる「最も誠実な抵抗」

もしあなたがこの状況を憂い、かつ改善の糸口を探るなら、以下のような「一歩」が考えられます。

  • 「問い」を止めない: ジムや岩場で「なぜここはリボルトされないのか?」「なぜこのラインは不合理なのか?」という技術的・論理的な疑問を、感情を排して投げかけ続ける。

  • 孤高のトランスフォーメーション: 野北のような場所で、あえて「ボルトを一切使わないスタイル」を貫き、それを一つのスタンダードとして提示してみせる。

「改善」とは、古い権威を倒すことではなく、新しい「より優れた価値観」でその場所を上書きすることです。