「コブラ効果(問題解決のための報酬や評価制度が、かえって逆効果を招く現象)」を、クライミングのグレード制度やジム運営・トレーニングに当てはめて分析すると、以下のような現象として捉えることができます。
「完登数(本数)」や「グレード」を目標・評価基準にすることの歪み
クライミングジムなどで「何級を何本登ったか」「最高何段を登ったか」という数字やグレードの達成を過剰に評価・目的化すると、本来の「身体操作の上達」や「純粋にムーブを楽しむこと」が二の次になり、数字合わせや形骸化が起きる。
事例1:グレードのインフレと「甘い課題」の乱立
ジム側やセッターが「完登者数や客の満足度(数としての実績)」を重視しすぎると、客が喜びやすい「実際より簡単な高グレード課題(甘い課題)」を量産してしまう。その結果、客は「自分は高グレードが登れるようになった」という一時的な報酬(承認欲求や達成感)を得るが、外岩やシビアなコンペでの実力(本来の課題解決能力)が伴わなくなるといった、実質的な技術低下や評価の形骸化を招く。
事例2:数字稼ぎのための「登り方」の妥協
「グレードを更新すること」自体が最大の報酬(目的)になってしまうと、ムーブの美しさや正当な手順(ホールドの限定や足の使い方のルール)を無視して、ダイナミックすぎる無理やりな動き(ラウンジ的な跳びつきなど)で力任せに完登を急ぐようになる。結果として、怪我のリスクが増えたり、基礎的な技術が育たなくなったりする。
教訓
クライミングにおいて名誉やグレード、初登という「外発的な報酬・数字」ばかりを追い求めると、かえって本質的な上達(技術力や身体能力の向上)という本来の目的が損なわれてしまう。
制度や目標を設定する際は、その数値やグレードが「本当に実力や技術を測るものになっているか」、あるいは「不要な歪みを生んでいないか」を見極める必要がある。