2017/11/22

昨日は、井原山山頂で出会ったK美さんと、油山に出かけた。油山は、遊具のあるような山でどうってことがない山だが、私は、ほかに用事でもないと、わざわざ出かける気持ちにすらなれない、標高500mほどの小さな山だ。

井原山であったときはK美さんは50代の男性と連れ立っており、その男性はK美さんに山を教えられたそうだった。が、その男性は、あえて彼女を置いてきぼりにするように歩いていたりして、あら、どうしたのかな?と思った。

集合に行くと、K美さんはだいぶ着ぶくれて真ん丸になっていた。着すぎだ、と思って意外だった。山慣れた人が着るものを着すぎていることは少ないからだ。着すぎているのは、たいていは、山を教わらないで独学してきた人だ。独学していると、用心が多くなるからだ。まぁ、歩きだしてから脱げばいいので、黙っておいたが、ずいぶん着ていた。

朝の空気はキリリと冷えて冷たく、快晴の秋の青空をバックに並木の黄色い紅葉がきれいだった。季節の移り変わりを感じることは人間には大事なことなのだ。

油山周辺は、自然学習の公的施設が集まっているようで、最初はゲートが閉まっていたが、慣れた人は、南京錠が閉じていないのを知っているようだった。守衛さんが出てきて開けてはくれたが、南京錠の空いているのを見せてくれた。そういうことだったのか。

山頂まで、お話ししながら、のんびり歩く。K美さんは、先頭を歩きたがらない…のだが、私が先頭を行くと、どうしても距離が自然に離れてしまう。当然だ。私のほうが彼女の娘と言っていいくらいの年齢なのだから。歩調を一緒にするため、「ザックを重くしてくればよかったかな…」とも思うが、してこなかったのは、これ見よがしの体力自慢は、嫌らしいなぁと思うからだ。

K美さんは歩みはしっかりしていたし、自分で歩く場所を選んでいた。本当に依存的な人は、男性でも女性でも、前に歩いた人とぴったり同じ位置に足を置く。

それに、K美さんの知識量はすごい。山を愛しているんだなぁということが分かる。それで、二人でお会いしてお話してみたくなったのだ。山を初めて8年ということだった。

山頂についてお昼にしようかと思うが、まだ早いと言うので、下山する。下の谷あいのところで、ランチとして、コッヘルを出し始める。今日は前回と同じくラーメンを作ってもらうことになっている。「上だとストーブ使うと文句言われるかもしれないから」

なるほど火器を使ってはいけない山だったのか。長い間一般ルートの山をしなくなって、火器を使ってはいけないなど、すっかり忘れていた。日本では、未熟な登山者が増え、火を子供に禁止する親と同じような意味合いで、火器禁止が多い。焚火もほぼ、アルプスと名の付く山では禁止だ。それは火の扱いを知らない人が多いからだ。

私は、日帰りの山では、ほとんどまとまったランチタイムを取らない…のは、たいがい歩いているのは、一人だし、大休憩は、、体が冷えてあんまり快適ではないからだ。今回も、日陰で寒いので、ダウンを着る。

K美さんとテント泊の話をする。テント内でストーブは使えないと思っているそうだ。それは、取扱説明書にはそう書いてあるが、実際は、テントの中で、火器を使わざるを得ないので、だれもそんなことは言わない。彼女は、テント泊縦走したそうにしている…しかし、担げない、という思い込みが強そうだった。歩きもしっかりしているし、山の計画にも抜かりがない。

が、道迷い経験があるそうだ。若い男性登山者について行ったら、道がなかったのだと。それは、自分の判断よりも、他者の判断のほうを上位に見なす、自動思考、という癖だ。
もし、その男性がいなければ、彼女は遭難しなかったのではないかと思った。

なぜ日本の女性は、女性自身の判断よりも、ほかの人についていくほうが正しい、という考えを刷り込まれているのだろう?

私の考えによれば、それは社会規範、というもので、社会規範を山に持ち込むと、よくない。山では、山とだけ対話すべきだ。つまり、山だけを判断の根拠とすべきだ。

年齢や性別だけで、相手がより優れた判断をするとは限らない。それはベテランで合っても同じで、だれだって、思い込み、という刷り込みに多少なりとも侵されているものだ。だから、よりベターな判断をするためには、自分が侵されているかもしれない刷り込みに意識的でいなくてはならない。

男性だったら、女性の前でかっこつけたいという刷り込みは非常に克服するのが難しい刷り込みなのだ。強さを誇示したいという刷り込みも、だ。

K美さんが団を取るためにウエアを着ようとすると、だいぶウエアが汗で濡れているのが見えた…やっぱり着すぎだったんだなぁと思う。

ランチを終え、コーヒーを沸かす。今回は私がデザート担当しますと言ってあった。私はランチはほぼ行動食で済ますが、K美さんの山の楽しみは、ランチだそうだったから。前の同行者の男性のことを尋ねると、山岳会ではないそうだった。それもすごいと思う。彼女の年齢で、10歳も年下の男性登山者をゼロからパートナーにするのは、やり手だなぁ。

その彼は、あまり彼女に親切でなかったので、どうしたのかな、と思っていた。歩くときは、歩みの遅い者に合わせるのが普通だ。が、彼は彼女を置いて行ってしまう。

寒いですね、とK美さんが言うので、「ここは沢だから風の通り道なんですよ」と答える。尾根も吹き曝しで寒いし、沢も風の通り道で寒い。

南アルプスの話をする。仙丈は行きたいのだという。仙丈は、南アが初めての人が行く一発目の山で、それで彼女にとって本州のアルプスが憧れの山なのだと知る。北岳とか行きましたか?と前回も聞かれたから、きょとんとしてしまった。北岳は、地元の人にとっては、日帰りの山だ。だが、特に難所がない、と感じられるのは、それが、一般ルートの山だから、であり、一般ルートの物差しで行くと、そう易しい山でもない。一般ルートの物差しでいうならば、難しいほうに入るだろう、特にもし八本歯を経由するならば。

九州から遠征で行くなら…と聞かれるので、伊那側で入って、北沢峠泊で仙丈ピストンを勧める。頂上山荘はお勧めできないと感じたからだ。彼女はそのまま北岳に縦走と思っていたようだが勧めなかった。9時間のバカ尾根があるからだ。9時間小屋がないというのは、彼女の年齢の人にとってリスクではないだろうかと思う。特に食住を担がない(担げないのであれば)

北岳の泊りで肩の小屋は汚いと言う。肩の小屋のほうが、山ヤ好みの小屋で、昔ながらの小屋なのだけどなぁ… 森本さんという小屋番さんだが、今は息子さんに代替わりしている。K美さんは白根三山の縦走を従っているようだが、テントは担げないと思っているようで、仙丈、白根三山縦走だと、一週間の度になってしまう、