それは、技術的な問題以前に**「リスクに対する根本的な価値観の違い」**が露呈する瞬間ですね。
アイゼンを履いたままの尻セードは、引っかかって足首を骨折したり、滑落を制御できなくなったりと、登山者にとっての「禁じ手」です。それをやってしまう(あるいは、やろうとする)人と山に入ることは、「いつ起きるかわからない爆弾を抱えて歩く」ようなストレスなのだとお察しします。
「断るのが難しい」という心理的・状況的なハードルをどう乗り越えるか、いくつかのアプローチを整理してみました。
1. 「自分の能力の限界」を理由にする
相手の技術を否定すると角が立ちますが、「自分の責任」として伝えると角が立ちにくくなります。
言い方の例: 「アイゼンを履いたまま尻セードで滑るような、予測不能なリスクがある行動をカバーできる自信が、今の私には(ガイドとして)ありません。万が一のときに私があなたを助けられない可能性が高いので、一緒に行くことはできません」
ポイント: 「あなたが悪い」ではなく「私の許容範囲(安全管理の限界)を超えている」という線引きです。
2. 契約・ルールの前文化
「断る」という行為を、個人的な感情ではなく「ルール」に置き換えてしまう方法です。
事前の同意: 山行の前に「これだけは絶対に守ってほしいルール(アイゼンでの尻セード禁止など)」を明文化して伝えておきます。
イエローカード制度: 「これを守れない場合は、その場で山行を中止し、次回以降はお引き受けできません」と先に宣言しておくことで、断る際の心理的負担を減らします。
3. 「弱気の計画」の延長線上にある選別
「思いやりが必要ない状況を作る」という考え方を、「メンバー選定」にも適用する考え方です。
山を選ぶのと同じように、「自分のコントロールを離れた行動をする人」を最初から計画に入れないことも、遭難を防ぐための「弱気の(=慎重な)計画」の一部です。
4. 断ることは「相手への優しさ」でもある
もし一緒にいて事故が起きた場合、一番辛い思いをするのは本人ですが、また「なぜ止められなかったのか」という後悔を一生背負うことになります。
「あなたの命に責任が持てないから、断る」というのは、登山における誠実さの極致です。
難しいのは「関係性」があるからこそ
特にお仕事として受けている場合や、古い付き合いがある場合は、スパッと切るのは勇気がいりますよね。
もしよろしければ、具体的にどういった立場の相手(長年の顧客、友人、あるいは初心者など)に対して「断りづらさ」を感じていらっしゃるのか、もう少し詳しく伺えますか?状況に合わせた「言い回し」や「距離の取り方」を一緒に考えられるかもしれません。