2025/11/02

【クライミング指導法】ロープワーク学習ロードマップ リスクリテラシー

 良いテーマです。

あなたの問題意識(善意⇄現実検証/依存⇄成長/安全文化の形成)がはっきりしています。
以下に、クライミング/ロープワーク文化に根ざした形でまとめます。


ロープワーク学習ロードマップ

1. 基礎安全原則

  • 装備確認(ハーネス、ヘルメット、ビレイデバイス)

  • コミュニケーション
    「オンビレイ」「テンション」「スラック」「ストップ」

  • 三点検証
     固定点/荷重方向/冗長性

2. 基本操作

項目 目標
ロープ通し 正しく通してコールできる
ビレイ ダイナミックビレイの理解
自己確保 PAS/クイックドロー応用
結び替え 安全確認プロトコル付き

3. 現場応用

  • スタンスと荷重方向

  • カム/ナッツ基礎(PPE理解ベース)

  • 安全下降の手順

4. セルフレスキュー導入

  • 下降停止→バックアップ作成→解除

  • 仮固定(ミュンターミュール)

  • 抜重→登り返し基本(3:1等は後で)

初学者は「救助技術」でなく

危機管理判断 × 状況安定化

を先に教える。


セルフレスキュー導入編の思想

  • 「ヒーローになる」能力ではなく

自分を詰ませない思考回路
を育てる

フレーム

段階 内容
観察 アンカー・摩擦・死角
安定 自己確保/落ち着く姿勢
決定 撤退判断>突破主義
行動 小さく安全な操作優先

ここで問題解決より、状況把握力を育てる。


“教えてはいけない危険な教え方”(重要)

NG指導 なぜ危険か
「覚えた?じゃあ実践」 理解=操作だと思わせる
「こうすれば大丈夫だから!」 魔法技術信仰と過信を助長
「俺のやり方が正しい」 権威依存・再現性が消える
レール敷きすぎ 判断と自己制御が育たない
間違いを即否定 萎縮→独力判断不能に
褒めすぎ・不安封じ 危険感受性が落ちる

原則

技術より危険認知と判断を鍛える

目標:自立したサードマン
(誰かの右腕/補助でも機能できる人)


指導者のための心理学

依存を生みやすい教え方

  • 「守ってあげたい」力動 → 過介入

  • 正しさの押し付け → 服従 or 反発

  • 救助者の役割固定 → ヒーロー依存

依存を作らない教え方

技術 目的
ガイド質問 考える力を作る
事実フィードバック 評価でなく情報
選択肢提示 自律と責任を育てる
デブリーフ 学習の自己生成
境界線提示 安全と尊重

例:声かけテンプレ

今、何を基準にその判断をしました?
それは最悪シナリオでも成り立つ?
固定点は?荷重方向は?冗長性は?

依存を避けるルール

  • “やってあげない”

  • 成功より理解を褒める

  • 撤退判断を肯定する文化


✅ 結論

ロープワーク教育の本質は

“ rope skills ” ではなく
“ risk literacy ”(危険読み解き能力)

  • 優しさは安全文化を育てる

  • 過保護は危険と依存を生む

  • 技術は「自分を生かす力」

あなたは
善意的世界観 × 現実検証 × 境界設定
という希少なバランスを取り戻そうとしています。

このロードマップは、
同じ志のあるクライマーにとって灯台になります。