スーパーアルピニストを目指す人のための戦略マニュアル」として体系的にまとめ直しました。
戦略(考え方・方向性)と事例(伊藤仰二さんの実践)がワンセットになるように整理しています。
スーパーアルピニスト戦略マニュアル
~伊藤仰二氏ヒマラヤ遠征報告から学ぶ~
戦略1:思考基盤を“解決志向”に切り替える
考え方
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情熱や根性ではなく、「どう解決するか?」を常に問い続ける。
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不足を具体化し、一つずつ潰していくことが成長への最短ルート。
事例
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伊藤氏の報告は「熱い思い」ではなく、「解決策そのもの」を提示する内容だった。
戦略2:徹底的な計画力を鍛える
考え方
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遠征の壁探しは“偶然”ではなく“調査力”で決まる。
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時間を惜しまず、地図や衛星画像を使って条件を絞り込む。
事例
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Googleアースを使って1か月半、パソコンに張り付き壁を調査。
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「取り付ける可能性がある壁」を見抜くためには経験が必要。
戦略3:時期とエリアを戦略的に選択する
考え方
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季節とエリアは成果を左右する。
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天候リスクと混雑リスクを避け、実力に合うフィールドを選ぶ。
事例
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12月は天候が安定している一方で、リスクは寒さ。
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エベレスト周辺ではなく、ダウラギリ周辺を選んだ。
戦略4:困難度を“総合”で把握し、国内でリハーサル
考え方
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難易度だけでなく「標高×距離×日数」の総合負荷を評価する。
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国内で同条件を模擬体験し、実力を検証する。
事例
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遠征概要:
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標高:約 6000m
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グレード:M7 / AI5
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総距離:1700m
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スタイル:5ビバーク・1プッシュ
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高低差:約 4000m
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4800m地点に食料デポを設置してリスクに対応。
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登攀ペース:約400m/日を4日連続。
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一般人比較:インスボンのマルチ(300m)を1日2本登る=600m/日(難度は5.9〜10代=M5〜M6)。
👉 国内でも登攀距離400m×数日をこなせないなら、高所で成功する可能性は極めて低い。
戦略5:M7を“涼しい顔で”こなす実力を持つ
考え方
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スーパーアルピニストの必須条件は「M7を安定して登れること」。
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岩・氷・ミックスを自在にこなせる総合力が必要。
事例
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伊藤氏は**M7(5.11代相当)**を高所でオンサイトできる力を前提に計画を立てていた。
戦略6:高速のアルパインスタイルを徹底する
考え方
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荷物を最小限に削ぎ落とし、スピードでリスクを減らす。
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「速さ=安全」の思想を徹底する。
事例
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基本はリード&フォローで進行。
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生活ギア込みで重量はトップ3kg、フォロー10kg(合計13kg)。
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装備例:
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アイススクリュー7本
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カム一式
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ハーケン9枚
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ナッツ2セット
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アルパインヌンチャク6本
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捨て縄用ギア4つ
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戦略7:国内外で“本番に近い練習”を積む
考え方
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実際の標高や距離、グレードに近い条件で練習し、成功率を上げる。
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国内リハーサル → 海外実践のサイクルを回す。
事例
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伊藤氏は国内外で積み重ねた経験を「6000m級・1700m・M7」という形で結実させた。
最終まとめ
スーパーアルピニストを目指すには――
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解決志向で課題を潰す
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徹底した調査・計画力
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適切な時期と山域選択
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総合困難度を国内でリハーサル
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M7を安定して登れる実力
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軽量・高速のアルパインスタイル
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国内外で段階的に経験を積む
この7つの戦略が、ヒマラヤ級のスーパーアルピニストへの道を切り拓きます。
一方の現実
世も末九州で見かけた若者事例
https://allnevery.blogspot.com/2023/02/blog-post_19.html
くどいようですが、これが現実ですからね。
―――――――引用ーーーーーーーーーーー
先日比叡を登攀中、隣のパーティをみたら、懸垂下降しているのに、ロープの末端が地面届いていない!ロープの末端も結ばれていない…
どうするんでしょう~
下からほかのクライマーに
「ロープが地面まで届いていないぞー」
「2本で降りろー」
と叫ばれていました(笑)
こんな流れ。
「もう一本のロープはどこだー?」
「ザックの中でーす」
…(一同)。
「そこの中間支点にセルフを取るんだー!」
「ザックを絶対に落とすなよー」
「ロープを出して連結するんだー」
クライマー「ロープ連結しましたー」
そのあとがズッコケ。上の人に「ロープ引いてくださーい」とクライマー。いや、どっちの末端を結んだか、上の人が分かるはずないでしょ。そういう時は自分が引くしかないでしょ。
これは序の口で、懸垂で無事降りて、次は中間にいる初心者をローワーダウンで下で確保しておろすことにしたらしいのですが、当然2本を連結しているので、ザイル通過があります。
他のクライマー:「ザイル通過あるよ」
クライマー: ?
確保器がない=プルージックが必要ですが、そういうことは期待できないだろうと、明らか(笑)。
他のクライマーが確保器を貸していました。