https://allnevery.blogspot.com/2025/09/blog-post_27.html
この記事を書いてから、このような登攀が、
フリークライミングのレベル感のクライミングに、アルパインクライミングのリッジ登攀を持ち込む、っていう行為だということを、改めて事例として示されたようで…
山からスタートしたクライミング族の人たちの”分かっていなさ”、”危うさ”というものを、きれいに鮮明に描き出しているようで、これで、私が伝えようと四苦八苦していたことが、映像で明らかになったのではないかと思ったりしています。
あー、福岡の山やのクライミング、怖かった…
宇土内谷のアイスが企画されていたので、なら行ってもいいなと思い、参加したら、結果的には、トンでもリードを無理強いされることになりました。
転進で、比叡になったんですが、初対面なのに、私がリード。しかも、ザックも背負いの全装&カムなし。岩場で登る予定では準備していないので、カムも持って行っていないし…。しかも、一人で二人をビレイするとか言う謎なビレイ。
は?って感じでしたが… これが虐待だということに気が付けるようになるのにも経験がいるというか…。
この動画の人たちも、これが間違ったクライミングだ、おかしいんだ、ということ自体に気が付けていないんですよね。
毒親育ちだと親が毒だということに気が付いていないで世代間連鎖しているのと似ていませんかね??
私は順調にステップアップして、フリークライミングの領域に来て、フリークライミングの登り方とアルパインの登り方が全然違うのにびっくりしていたんですが…。そのびっくりは、世界的なトップクライマーの故・吉田和正さんから、もたらされたものでした。
それまでは、奥秩父のゲレンデに通って、マルチを朝から晩まで本数を稼ぐ系で登っていました。私は、それを三つ峠でやるように師匠からは言われていましたが、付き合ってくれた先輩は、東京の人だったので、後輩の私のほうが妥協して4時間の運転をこなしていっていました。
なので、当時の私の中には、クライミングっていうのは、マルチですいすい登るイメージしかなかったのです。合言葉は、”セカンドはさっさと登る”、でした。
アルパインののぼりでは、セカンドはリスクフリーとされています。トップロープだからですが。しかもロープも挽かれないことが多く、たるたるです。トップはビレイしてくれるはずなんですが、まぁあんまりセカンドのことを見ていませんね。
あんまりセカンドを見ていないトップの時は、もうロープを手繰ってしまってゴボウした方が、より安全です。ロープ登攀に切り替えて、プルージックを出した方が安全・・・っていうことが、この動画ではそうなっていませんでしたが、まあ、自分のロープ登高のスキルが確実なら、通常はそうです。
ところが、いくら自分のロープ登高のスキルが確実でも、死を免れないかもしれなかったのが、白亜スラブでした。リードクライマーのポカがあれば、まぁパーティ全員が死ぬことがあるのだ、と理解しました。
リードしてくれた彼も結局は、
フリークライミングのレベルにおける正しいリード法
をきちんと習得しておらず、カムの位置は悪くてロープは流れないわ…ロープ長は足りなくなるわ…だったんですが…それらは、ショートの岩場で、すでに既出の技術的ミスでした。
つまるところ、ショートの岩場で安全に失敗して、失敗が許されないマルチに進む、という方法論が破綻しているんですよね。
ショートを何年続けても、マルチで安全には登れない。
アルパインのリッジ登攀をフリーに持ち込んでいると先ほど述べましたが、この白亜スラブの場合は、それすらしていません。リッジ登攀に慣れた人は、ロープの流れをよくするためにスリングで伸ばす、ダブルのロープを使う、などは、習得済みであるはずだからです。
ところが実際は?
シングルでしか登れない、スリングで伸ばすとか知らない、ロープの流れが悪いと登れなくなることを実体験として理解していない…
など…経験年数と比較して、え?そんなことも知らないの?と驚くようなことになっています。
ということで、結局のところ、
正しいクライミングをそもそも誰も見たことがないのではないか?
というのが私の結論なんですが…。この大貧民当たりの課題だとアルパインなのかフリークライミングなのか、領域的にも微妙で、私はあれ、遠くて手が届かない系ですからリードは断りたいですが、男子なら、全部ガバだから(=つまり、ムーブはいらない)、プロテクション要らないって思いそうですよね。
菊地さんとか、ヒロケンさんとか、奥村さんあたりが、動画でこの大貧民をきちんと登ってくれている動画を出したらどうですかね?
社会貢献の一環として。トップのクライマーは良いクライミングを普及してほしい。
トンでも動画の対抗策は、技術的に正しいクライミング、を多くの人が分かるように共有していくことなのではないかと思います。
とくに、リッジ登攀のレベル感である、小川山烏帽子岩左岩稜とフリークライミングの水準である屋根岩2峰セレクションの差は大きいです。
ちなみに、インスボンで登ったのは、全部フリークライミングのレベル感でした。現代のクライマーはグレードだけが突出しているので、インスボンできちんとリードできなくても、白亜スラブは登れるみたいな感じです。
■クライミング事故が減らない理由
単なる「技術不足」や「経験差」の話ではなくて、
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「正しいクライミングを誰も見たことがない」ことによる文化的断絶
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アルパイン的な慣習(リッジ感覚)をフリー領域に持ち込む危うさ
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ショート→マルチという方法論の破綻
という、体系的なズレそのものだと思いました。
特に印象的だったのは、:
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リッジ登攀に慣れていれば当然身についているはずのロープ処理(ダブルロープ、スリングで伸ばす)が欠如している
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経験年数と技術的な基礎が噛み合っていない
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結局「誰も正しい登攀を見たことがない」ので、間違ったやり方が常態化している
つまり、かつて「吉田さんの登り方」に出会って衝撃を受けたように、多くの人は「正しい登り方そのもの」を一度も直に見ていない。
だから修正のきっかけすらないまま、世代間で「分かっていないやり方」が連鎖してしまう。
ということなんですよ。吉田さんがあまりにきちんとビレイしてくれたんでびっくりしたんですよ。
カムの正しい設置、ダブルロープの流し方、セカンドへのロープさばき、マルチでのリード交代の流れ など…
基本のキをすっ飛ばしてみんな山や岩場に来ているが、スっ飛ばしていること自体にも自覚がないんですよ。
毒親連鎖3世代目みたいな感じで。